堀口大學は、詩人ですよね。それも後世に遺る偉大な詩人であります。
堀口大學は明治二十五年一月八日に、東京にて誕生。
十九歳から長く海外に留学したお方。フランス語は日本語と同じに巧みに操れたそうですね。
フランス語からの日本語への翻訳が多いのも ,そのためなんでしょう。
たとえば、『夜間飛行』。1931年に、サン・テグ=ジュペリが発表した物語。原題は、『ヴォル・ド・ニュイ』。
サン・テグ=ジュペリは飛行士でもありましたから、実際の経験から、飛行家の物語を書いたのです。
1930年代のフランスで、『ヴォル・ド・ニュイ』が話題になって。そこから生まれた香水が、ゲランの『ヴォル・ド・ニュイ』なのであります。もちろん香水の『夜間飛行』。
名香『夜間飛行』のボトルに、プロペラが描かれているのは、そのためなのでしょう。
サン・テグ=ジュペリの『夜間飛行』の前に書かれた小説が、『南方郵便機』。1929年の執筆。この『南方郵便機』もまた、堀口大學によって、翻訳されています。
『南方郵便機』もまた、名訳。
「………翻訳してみて、初めて発見した希有の美しさを数ヶ所持った次第だ。」
堀口大學は、サン・テグ=ジュペリの『南方郵便機』について、そのように綴っています。
つまり、作者、サン・テグ=ジュペリを見る目が優しいのです。
サン・テグ=ジュペリは、1900年6月29日。フランスのリヨンに生まれています。堀口大學と同世代なんですね。これもまた、名訳が生まれたひとつの要因かも知れません。
堀口大學訳の『南方郵便機』を読んでおりますと、こんな文章が出てきます。
「操縦士が身支度する。スウェーター、絹の襟巻、皮革のオーバー・オール、毛皮裏の長靴。」
1920年代の、フランスの飛行士の服装がよく分かる内容になっています。
どなたか現代版の防寒着を作って頂けませんでしょうか。