ニシンは魚の一種ですよね。ふつう鰊と書いて、「にしんと訓みます。
身欠きにしんだとか、にしん蕎麦だとか、うまいものです。
にしんのこどもが、数の子。数の子もまた、酒によく合うものですね。
にしんはだいたいが北の魚。たとえば、北海道、たとえば、小樽。小樽には今も「にしん御殿」が遺っています。
明治の頃は、春になってにしんがやって来ると、海の色が変わったそうですね。にしん色に。
豊漁、豊漁、また豊漁。「にしん御殿」が建つはずであります。
「………鰹魚をまぜて与へ、また折々は、田作に鰊、乾鮭などを………」
江戸初期の古書『猫さうし』に、そのような一節が出てきます。猫に食わせるくらいですから、人も食べたでしょう。
「一束の杉の葉を吊した軒下に、「名物にしん蕎麦」といふ字が、障子へ大きく書いてあつて………」
1920年に、上司少剣が書いた小説『石川五右衛門の生立』に、そのような文章が出てきます。たぶん石川五右衛門の時代にも、「にしん蕎麦」はあったのでしょう。
ニシンが出てくる短篇に、『ブラッシュウッド・ボーイ』があります。
「この魚に比べたら二メートルはあると言われるターポンもニシンみたいなものである。」
これは巨大魚「マーシア」を形容する表現として。
また、『ブラッシュウッド・ボーイ』を読んでおりますと、こんな描写も出てきます。
「………第一軍の黒のジャージィ、白いニッカーズボン、黒い靴下を着て………」
これは十七歳の少年が、フットボールをする場面での様子。
もともとは、ニッカーボッカーズなのでしょう。が、時には短くして「ニッカーズ」とも。
どなたか白のニッカーズを仕立てて頂けませんでしょうか。