ブトンとブローグ

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ブトンは、ボタンのことですよね。buton と書いて、「ブトン」と訓むんだとか。フランスでは。もちろん英語の「バトゥン」button のことです。
昔、日本語では、釦とか鈕の文字を宛てたんだとか。それをフランスでは、「ブトン」。音だけに関して申しますと。私たちが、「羽布団」という時の、「ぶとん」にも近いのではないでしょうか。

ふつうボタンはボタン穴に通して、留めることになっています。ところがボタン・ホールのないボタンもないではありません。
たとえば、燕尾服の前ボタン。燕尾服の前身には、たいてい六つほどのボタンが二列に並んでいます。でも、それに対するボタン穴は用意されていないのです。
前ボタンを嵌めることなく着るのが、習慣になっているのですから。
燕尾服はもともと十八世紀の狩猟着だったもの。ごく細身の両前の上着だった。しかし馬の上ではボタンを留め、馬から降りた時には、ボタンを外しておいた。その外しておいた時の様子から、今の燕尾服が生まれたのであります。

ボタンが出てくるミステリに、『震えるスパイ』があります。2006年に、英国のウィリアム・ボイドが発表した物語。

「エヴァはジャケットのボタンをかけ、髪をチェックした。」

「エヴァ」は女の人。女の人が髪に気を配るように、男はボタンの掛けかたに気を使うべきなのです。
立っている時には、ボタンを留め。椅子に腰かける時にはボタンを外しておくように。
ウィリアム・ボイド著『震えるスパイ』には、こんな描写も出てきます。

「注文仕立てのツイードのスーツを着て、重い茶色のブローグを履いたボビーは………」

これはオックスフォード大学の、ロバート・コークという人物の着こなしとして。
ブローグbrogue は、もともとはスコットランドの労働靴だったもの。本来は、「私は貴族的な靴を履くような人間ではありません」。そんな謙虚な心が隠されていたものです。
ブローグが、「重い」のも、過酷な使用に耐えるためだったのでしょう。
どなたか本格的なフル・ブローグを作って頂けませんでしょうか。

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