グアナコとクロワゼ

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グアナコは、動物の名前ですよね。guanaco と書いて、「グアナコ」と訓みます。ひと言で申しますと、ヴァイキューナ(ヴィキューナ)によく似た動物です。
一般に、リャマ、グアナコ、アルパカ、ヴァイキューナは、近隣種の動物だと考えられています。理想だけを言いますと、ヴァイキューナのコートがあるのなら、グアナコのコートがあってもいいわけです。
グアナコはヴァイキューナよりも身体が大きくて、やや低い山岳地帯にも棲むことができる動物。家畜化も不可能ではありません。

グアナコが出てくる回想録に、『バラの回想』があります。著者は、コンスエロ・ド・サン=テグジュペリ。
もちろん、サン=テグジュペリの奥さんだったお方です。

「私はそこに蛇口つきのポルトの小樽を据え、壁にグワナコの毛皮を掛け、剥製の動物と自分で描いたデッサンを飾った。」

これは1930年頃の、パリのアパルトマンでの様子として。妻のコンスエロは、夫のことを「トニオ」の愛称で呼んでいたそうですね。
アントワーヌとコンスエロは、1931年の4月に、結婚。その少し前のことかと思われます。
1931年の10月には、『夜間飛行』が、刊行。原題も同じく『ヴォル・ド・ニュイ』。この小説が人気になったために生まれた香水がゲランの「夜間飛行」なのですね。1933年のことであります。

1931年のコンスエロとの結婚式に、アントワーヌはどんな服装だったのか。ダブル前のダーク・スーツ。フランスでの結婚式には、ダーク・スーツでのことが多いようです。1931年4月23日。「アゲー城」での挙式の際に。
その少し後、パリを散歩するアントワーヌとコンスエロは、明るいグレイのスーツ姿。ここでもアントワーヌは六つボタン型の両前のスーツを着ています。

さらには1938年5月にも、ダブル前スーツの写真が遺されています。パリのサンラサール駅のプラットフォームで。ほとんど黒に近いダーク・スーツを。これはスペインからパリに着いた時の写真。
もうこれ以上の例は挙げませんが。今、サン=テグジュペリの在りし日の写真を眺めて思うことは、そのダブル前スーツへの偏愛であります。
ダブル・ブレステッドはフランスでは、「クロワゼ」croisé 。もう少し正しくは、「ヴぇストン・クロワゼ」が、「ダブル前上着」の意味になります。
どなたか1930年代のヴェストン・クロワゼを再現して頂けませんでしょうか。

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