ジャガーとシャンダイユ

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone

ジャガーは、動物の名前ですよね。jaguar と書いて、「ジャガー」と訓みます。豹にも似ているネコ科の動物なんだそうです。
ジャガーは走るのが速いので、自動車の名前にもあります。自動車の場合にはぜひとも「ジャギュア」と訓んで頂きたい。そう言ったのは、伊丹十三であります。まあ、それほどに愛着があったのでしょう。
ジャガー愛好家には、年代物を好む人たちもいるようですね。1950年代のジャガー。1940年代のジャガー。1930年代のジャガー。年代物のジャガー。たしかに美しい姿をしています。
年代物ジャガーを可愛がるお方もいるようで。たとえば真冬のジャガー。いきなり点火することはありません。一度、エンジン・オイルを抜いて。しかるべき適温にまで温めて、再びエンジンの中に。それからゆっくりと点火ボタンを押したりするんだそうですね。
寒い朝、仔猫に牛乳を飲ませる時、少し温める。熱いのはいけません。猫舌というではありませんか。ほどよい加減の牛乳を。
考えてみれば、猫の牛乳を温めるのも、ジャガーのオイルを温めるのも、似たようなものではありませんか。
つまり英国人にとっては一頭のジャガーを自宅で飼うのにも似ているのでしょう。

フランスの作家でジャガーを愛した人に、サガンがいます。フランソワーズ・サガン。1954年に、『悲しみよこんにちは』で、デヴューして、世界中でベストセラーに。遣いきれないほどの印税が入ってきて。
まず最初にサガンがしたのは、「アストン・マーティン」の型録を取り寄せることだったという。サガンはハイ・スピードがお好きで。「英国車は速い」と考えていたらしい。

「サガンが、みずからジャガーXK140を運転し、初めて自宅まで迎えにきたときのことを、ベルナールが話してくれた。」

マリー=ドミニク・ルリエーヴル著『サガン』に、そのような一節が出てきます。
これは男友達を迎えに行く場面として。1950年代の話ですからねえ。

また、マリー=ドミニク・ルリエーヴルの『サガン』には、こんな文章も出てきます。

「イングリッドが、サガンのシャンダイユを貸してくれた。」

「シャンダイユ」chandail は、フランスでスェータのこと。
これは「マルシャンダイユ」を短くして、「シャンダイユ」。
「マルシャンダイユ」は、ニンニク売りのこと。十九世紀の巴里の、中央市場で働くおじさんおばさんの着ていたトリコから。もちろんニンニクだけでなく、野菜その他も売っていたのでしょうが。
どなたか十九世紀巴里のシャンダイユを再現して頂けませんでしょうか。

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone