汁とシルク・コットン

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汁は、汁物のことですよね。たとえば、お吸い物。たとえば、味噌汁。汁物があってこそ、食事が美味しく頂けるというものであります。
「一汁一菜」というではありませんか。いよいよとなれば、一汁と一菜あれば食事にならないものでもありません。もちろん、「一汁三菜」、「一汁五菜」の言葉もあるんだそうですが。

「………諸君が一汁一菜で、女に費やす金を其方に向けたら、直ぐ出来る。」

1905年に、徳冨蘆花が発表した小説『黒潮』に、そのような一節が出てきます。
これは「東老人」が、政治家に対しての言葉として。政治には金がかかるという意見についての「東老人」の考え方を述べたもの。
汁が出てくる随筆に、『海へ』があります。大正七年に、島崎藤村が発表した文章。

「細造りの鯛の刺身が醤油に浸みて行く時。久し振りで吸う汁の中から滑らかな蓴菜が出て来る時。塩焼の鮎の肉が骨から離れて来る時。」

まだ、延々と続くのですが。藤村は日本ならではの情感を感じたと、書いています。場所は、京都の「瓢亭」。蓴菜は、当時の深泥池のものが上質だと考えられていたらしいのですが。
藤村の『海へ』を読んでおりますと、お父さんへの手紙の一部も出てきます。

「木綿と絹とをまぜた丈夫な手織縞で、それを着る時季も短い故もございましたが………」

これは以前、お母さんが作ってくれた着物の話。今でも一枚遺してあるとも、藤村は書いています。
シルク・コットンのブレンド生地。
どなたかシルク・コットンのスーツ地を織って頂けませんでしょうか。

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