レッテルとレザー・パンツ

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レッテルは商標などを容器に貼っておくことですよね。
もともとはオランダ語の「レテル」letter から来ているんだとか。英語の「レター」、文字のことです。なにか文字が書いてあるので、「レッテル」となったのでしょうか。

「それはたしかに、ずんぐりした形、古風なレッテルのオールド・パーだったからである。」

1966年に、丸谷才一が発表した小説『笹まくら』に、そのような文章が出てきます。
今ならレッテルではなく、「ラベル」と言ったのかも知れませんが。「オールド・パー」がスコッチの銘柄であるのは、言うまでもないでしょう。
丸谷才一の『笹まくら』を読んでおりますと、こんな描写も出てきます。

「………大きな包みを抱えた皮ジャンパーの男が、隣のスーパーマーケットから出て来て声をかけた。」

いつもと違う格好なので、つい、お見それする場面として。

「これもお互いのレッテルが反対かもしれませんね」と高がいった。

1936年に、阿部知二が発表した『冬の宿』に、そんな会話が出てきます。これは、「高」が、「嘉門」に対しての言葉として。
今でも、「レッテルを貼る」は、ひとつの形容として使われることがあるでしょう。
AさんならAさんの印象を勝手に決めてしまうこと。「レッテルを貼る」。でも、時と場合によっては、単なる思い込みだったりすることもあるのですが。

レッテルが出てくる短篇に、『レーチェル』があります。1930年代にアメリカの作家、コールドウェルが発表した小説。

「白いレッテルを貼った薬瓶のならんだ………」

そう言えば、昔の薬瓶に貼ってあるのは、「レッテル」がふさわしいのでしょう。
1933年の、『タバコ・ロード』は、コールドウェルの代表作でしょうか。1958年の、日本語訳者、横尾定理の説明によりますと。『タバコ・ロード』は、800万部売れたんだそうです。
累計すれば、1000万部は軽く超えているのではないでしょうか。アメリカであろうとなかろうと、純文学の世界での1000万部は、驚くべき数字だと思います。
コールドウェルがやはり1930年代に書いた短篇に、『真冬のお客』があります。この中に、こんな描写が出てきます。

「その男は黒の皮ズボン、赤と緑の模様のラシャ服をきて、茶いろの毛皮帽を、目と鼻だけがようやく見えるくらい、まぶかにかむっていた。」

これは「フェルプス」という旅人の着こなしとして。「真冬のお客」ですから、暖かい服装なのでしょう。
この家の主人は、オーランド・タスクで、結局、一夜、フェルプスに宿を提供するのですが。
レザー・パンツもいいものですね。風を通さないパンツ。そしてなにか、郷愁を感じさせるところがあります。
どなたか白い鹿革のパンツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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