モーニングとモンクストラップ・シューズ

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone

モーニングは、朝のことですよね。「グッド・モーニング!」というではありませんか。「朝は夜より賢い」の言い方もありますし。
もし夜に哀しいことがあっても。翌朝には必ずまっさらに一日がはじまっています。ですから、「朝」は素晴らしいのです。
モーニングとおしゃれといえば、「モーニング・コート」でしょうか。十九世紀の代表的な紳士の上着だったものです。今、私たちが上着を着るように、十九世紀の紳士は、モーニング・コートを羽織ったものであります。
でも、なぜ、「モーニング・コート」なのか。十九世紀の典型的な訪問着だったから。当時は友人宅を訪ねるには、午前中がよろしい、という常識があったので。
友人宅には、馬で行った。馬に乗りやすい上着が、モーニング・コートだったのです。
前裾のカットのことを、「カッタウェイ」。あれもまた乗馬に適したスタイルだったわけであります。
モーニング・コートが午前中の装い、あるいは日中の服装とされるのも、すべては英国の十九世紀の習慣にはじまっているわけですね。

「………隅川は質素な背廣にて澁木はモーニングコートを着せり。」

1888年に、末廣鐵腸が発表した小説『花間鶯』に、そのような一節が出てきます。日本の小説にあらわれる「モーニングコート」としては、比較的はやい例かも知れませんね。

さて、もう一度、「朝」に戻るといたしましょう。
朝の場面が出てくる小説に、『アングロ・サクソンの姿勢』があります。1856年に、英国の作家、アンガス・ウィルソンが発表した物語。

「ホテルの寝室の出口のところで彼は振りかえって、寝乱れたままのベッドと、その上にのっている盆のなかの空のジョッキやクロワッサンの屑をながめていた。」

これは旅先での朝の七時のこと。
ウィルソンの『アングロ・サクソンの姿勢』を読んでおりますと、こんな一節が出てきます。

「………クリーム色の絹のシャツ、ダーク・レッドのタイ、そして軽いスウェードの尾錠靴といういでたち。」

これは「フランク・レミッジ」という紳士の着こなし。
「スウェードの尾錠靴」。私はここから勝手に、モンクストラップ・シューズを想い浮かべたのですが。
ここでの「モンク」monk は、「修行僧」のこと。その昔、修行僧が履いた質素な靴のスタイルから来ているのです。
どなたか白いスウェードのモンクストラップ・シューズを作って頂けませんでしょうか。

Share on FacebookTweet about this on TwitterShare on Google+Email this to someone