キャビンとキャヴァルリ・トゥイル

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キャビンは、船室のことですよね。cabin と書いて、「キャビン」と訓みます。この「キャビン」はもともとは、「小屋」の意味だったとか。
古いプロヴァンス語の「カバナ」cabana と関係があるんだそうですね。もちろん「小屋」のこと。
おしゃれ語にも、「カバナ・セット」があるのは、ご存じの通り。リゾート・ウエア。シャツと半ズボンとを同じ色柄で揃えたものを、「カバナ・セット」と言います。

「………私は其の儘自分の船室に閉じ籠って、長椅子の上へ身体を横へ………」

永井荷風が、明治三十六年に書いた『あめりか物語』に、そのような一節が出てきます。これは横濱から船でアメリカに渡ろうとしている場面。
荷風は、「船室」と書いて、「カビン」のルビを添えているのですが。
そのキャビンにノックの音があって。船で出会った日本人が訪ねてくるのですね。

「………高い襟の間から華美な襟飾を見せて居る。」

これは「柳田」という人物。そこでボーイに頼んでウイスキイを持ってこさせるのですが。

キャビンが出てくるミステリに、『ロセンデール家の嵐』があります。1989年に、英国の作家、バーナード・コーンウェルが発表した物語。

「わたしを疑っていたからこそ〈サンフラワー〉をひっかきまわしたはずなのに、今夜はキャビンにはいろうとさえしなかった。」

ここでの「サンフラワー」は、ヨットの名前。持ち主は、ジョン・ロセンデールという設定になっています。
これは「ギャラード」という男について。ギャラードは、どんな格好をしているのか。

「競馬人種によく見かけるキャバルリーツイル地のズボンに、チョッキとツイードのジャケットを着たギャラードの姿が浮かびあがった。」

この「キャバルリーツイル」は、何度か出てきます。
「ヴァルリイ・トゥイル」cavalry twill
は、もともと騎兵隊の制服として用いられたので、その名前があります。乗馬ズボンに最適だったので。急勾配の、深い、綾織が特徴のものです。
どなたかキャヴァルリイ・トゥイルで、スーツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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