パサージュは、小道のことですよね。passage と書いて、「パサージュ」と訓みます。もともとは「通り」の意味なんだそうですが。
巴里には、たくさんのパサージュがあります。おしゃれな小道。車の入れない小道ですから、ゆっくり買い物するにも便利。
一人でパサージュで掘り出し物を見つけられるようになったら、立派な巴里通でしょう。私も昔、「ギャルリー・ヴィヴィエンヌ」のパサージュには、よく通ったものです。
パサージュが出てくる雑誌に、『最新流行』があります。『ラ・デルニエール・モード』。1874年9月6日の創刊号。この時には、月二回刊の発行だったようですね。
この『最新流行』を印刷したのが、「リシャール・ベルティエ印刷所」。その印刷所のあったのが、「オペラ座パサージュ」だったのですね。
『最新流行』は雑誌ですから、広告も出ています。ただし「名刺広告」のようなあっさりしたものではありますが。たとえば、「プリヴァ商会」。九月四日通り十五番地にあった手袋専門店。
あるいは、「モンターニュ・デコス」。店はフォーブール・サントノーレにあって。トゥイードの専門店。
さらには、リュウ・ド・ラ・ペエ21番地の「ドゥーセ」。ウエディング・ドレスの専門店として。
『最新流行』は誰が編集長だったのか。誰が発行人だったのか。詩人のステファヌ・マラルメ。ちょっと信じ難いことですが、ほんとうの話。
「この取るに足らぬ小雑誌をあなた、というよりもむしろ奥様がご笑納くださいますように。」
1874年8月6日の手紙に、マラルメはそのように書いています。
『最新流行』を隅から隅まで読んでおりますと。こんな説明文も出てきます。
「小振りの上着は、後ろは身体に沿って、前はそうではない。」
ここでの「上着」は、原文では「パルト」paletot となっています。
「パルト」は、もともとは身体にフィットした外套のこと。今では軽い上着でもあります。
どなたか1870年代のパルトを再現して頂けませんでしょうか。