きゃあろとキャンプ・ストゥール

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きゃあろは、蛙のことですよね。静岡地方の昔の言葉で、蛙のことを「きゃあろ」と言ったんだとか。静岡の民謡に、『ちゃっきり節』があります。

🎶 歌は、ちゃっきり節。
男は、次郎長。
花は、たちばな。

この中に。

🎶 きゃあろがなくんで あめずらよ

そんなふうに出てきます。
昭和二年の、北原白秋の作詞。作曲は、町田佳声。
昭和二年の十月、北原白秋は招かれて静岡に。当時の「静岡電気鉄道」が、宣伝歌を作るために。
北原白秋は料亭で、豪遊。毎晩毎晩、藝者を揚げての宴会。でも、作詞のほうはいっこうに進まない。
「静岡電気鉄道」では、作詞の人選を誤ったのか。そんな折も折。北原白秋が藝者のひとりに訊いた。「明日の天気はどうかね?」 その時の返事が。

「きゃあろがなくんで、あめずらよ」

このひと言で、すべてが白秋の頭のなかで繋がって。三十篇の歌詞を一気呵成に仕上げたと、伝えられています。北原白秋の『ちゃっきり節』は、故き佳き時代の静岡方言が、たっぷり盛り込まれている点でもユニイクな民謡です。
昭和二年の北原白秋は、四十二歳で、それまでの谷中から、当時は郊外だった太田区大森、緑ヶ丘に移転しています。
また、八月には、『東京日日新聞』のために日本全国を旅してもいます。白秋の旅多き時代だったとも言えるでしょう。

蛙が出てくる長篇に、『ノー・ネーム』があります。1862に、英国の作家、ウィルキー・コリンズが発表した物語。この中に。

「レカウントのヒキガエルは世界最古のヒキガエルなのですよ。」

これは「ノエル・ヴァンストン」の科白として。
また、『ノー・ネーム』には、こんな描写も出てきます。

「カラーはいつもより高く、手に新品の携帯用折り畳み椅子を持っている。」

これは「ラッグ大尉」の様子として。では、ラッグ大尉はどんな恰好なのか。

「フロックコート、堅い夏のネクタイ、白い山高帽という上品な服装。」

では、「携帯用折り畳み椅子」はどんなものなのか。原文を開いてみますと。

camp stool 。ウィルキー・コリンズは、そのように書いてあります。
まず革巻きの把手があって。それが左右に開くようになっていて。簡単に腰を降ろすことができる。それを、ウィルキー・コリンズは「キャンプ・ストゥール」と言ったのでしょう。
どなたか新しいキャンプ・ストゥールを作って頂けませんでしょうか。

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