肖像とジーンズ

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肖像は、似た姿のことですよね。「肖像画」というではありませんか。「肖」は似ているの意味があるんだそうですね。
これが「不肖」となりますと、似ていないの意味に。不肖の息子は、お父さんとは似ていない息子というわけですね。
今の時代には写真があります。まだ写真のない時代には、肖像画が大いに活用されたものです。故き佳き時代の画家が、まず例外なく肖像画を描いているのは、そのためなのでしょうか。
肖像画が出てくる短篇に、『少年』があります。明治四十四年に、谷崎潤一郎が発表した小説。同級生の男の子に、主人公が家に誘われる内容になっています。

「………左側の壁間に掛けられた油絵の肖像画の上におちて………」

これは物語の主人公が、塙 信一の家の中を眺めている様子として。

谷崎潤一郎の『少年』をすぐに読んだお方が、永井荷風。永井荷風はその時の感想を次のように書いています。

「もう私はとても、あの若い新進作家の書いた『少年』のやうな、強い力の籠つた制作を仕上る事ができないのだ」

明治四十四年にはまだ、永井荷風と谷崎潤一郎とは、面識がありませんでした。後に、潤一郎は荷風を師と仰ぐようになるのですが。

小説の題に「肖像」とつくものに、『若い芸術家の肖像』があります。1916年に、ジェイムズ・ジョイスが発表した長篇。この中に。

「白の半ズボンにジーンズ姿の上級生が二十人ほど舞台からぱたぱたとおりてきて………」

これは「ベルヴェディア校」での様子として。たぶん制服をきているのでしょう。そのシャツがデニムだったのでしょうか。もちろんほんとうに「ジーン」の生地だったのかも知れませんが。
それはともかく、十九世紀末のダブリンで、デニムなりジーンなりの生地を制服に使うことがあったものと思われます。
どなたかジーンのシャツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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