シュロは英語で、「パーム」 palm というんだそうですね。どうしてシュロがパームなのか。これはラテン語の「パルマ」palma と関係があって、「手」の意味があったんだとか。あのシュロの葉の形が「手」に想えたのでしょう。
シュロが出てくるミステリに、『推定殺人』があります。ギリアン・リンスコットが、1990年に発表した物語。ただし時代背景は1870年代の英國におかれているのですが。
「棺の両端には栄誉をあらわすシュロの枝が置かれている。役員会のとりはからいで、王立植物園キューガーデンからこのサヴィルロー街にわざわざ持ってきたものだろう。」
「棺」とは、リヴィングストン博士の柩。デイヴィッド・リヴィングストンは、1873年5月1日。アフリカの奥地で、世を去っています。そのリヴィングストン博士の遺体が倫敦に着いたのは、1874月4月18日のこと。
でも、どうしてサヴィル・ロウなのか。サヴィル・ロウには「王立地理学協会」があったから。王立地理学協会で内輪の葬儀がいとなまれて。翌日、ウエストミンスター寺院での、公けの葬儀が行われています。
1869年に、リヴィングストン博士のアフリカでの様子が分からなくなったことが。そのため莫大な費用を投じて、捜索が行われて。ついに、ヘンリー・スタンリーが博士を、発見。博士はあまりに痩せて、面変わりしていた。で、スタンリーが博士に会ってはじめて言った言葉。
「ドクター・リヴィングストン! アイ・プレジューム?」
「リヴィングストン博士と、お察し申し上げますが。」
これは今の時代でも。意外な所で意外な人に会った時の慣用句としても、使われることがあるんだとか。
『推定殺人』には、こんな描写も出てきます。
「彼は夜会用のシャツと深紅のカマーバンドの上に………………」。
「彼」とは、ファキール・フォーリーという人物。時代はもちろん、1870年代。「夜会用」ということは、ハード・カラーのシャツなのでしょう。ハイ・カラーで、ハード・カラー。袖口も「シングル・カフ」。これはハード・カフなので、二重の折り返す必要がないという意味なんですね。
時には、ハード・カラー、ハイ・カラーのシャツも着てみたいものですね。シュロのように「栄誉」の印になるかどうかは定かではありませんが。