フォーはベトナム料理のひとつですよね。ベトナムの麺。ツルツル、サラサラ。日本のきしめんに似ていなくもありません。が、歴史からすれば、フォーよりもきしめんのほうが、ずっと古いみたいですが。
いや、そうではなくて、「フォー」Fo e 。この場合の「フォー」は、英国人の姓にもあるんだそうですね。たとえば、ダニエル・デフォー。もちろん『ロビンソン・クルーソー』の作者であります。
でも、ダニエル・デフォーは、筆名。本名は、ダニエル・フォー。フォーの前に、自分で「デ」をつけて、デフォーにしたんですね。
このダニエル・デフォーに落ち着く前、実にいろんなペンネームを使っています。が、「ダニエル・デフォー」にしたとたん、とは言いませんが。とにかく、「ダニエル・デフォー」で成功。やはり名前は大事なものなのでしょう。
『ロビンソン・クルーソー』は、ほんとうにあった話がもとになっています。アレキサンダー・セルカークというスコットランド人船員が、ある事情から無人島に置き去りにされる。これは、事実。この事実に想を得て物語にしたのが、ダニエル・デフォー。『ロビンソン・クルーソー』が大当たりとなって、次にダニエル・デフォーが発表したのが、『ペスト』なのです。
中世のイングランドではほぼ二十年置きに、ペストの流行があったと伝えられています。もちろん、大きい流行も小さい流行もあったでしょうが。
1664年の倫敦のペスト流行は、そうとう大きいものだったらしい。この話をもとに、1722年にデフォーが書いたのが、『ペスト』なのです。
『ペスト』を読むと、ダニエル・デフォーの想像力が、只者ではないことがよく分かります。
「事実を描く天才」と、ある人が言ったそうですが、まさにその通りでしょう。『ペスト』の中に。
「黄色いフランネルのチョッキを着……………………。」
そんな描写が出てきます。ということは、1664年の倫敦には、すでにフランネルが身近なものになったいた、そう考えて良いでしょう。
なんだかイエローのウエイストコートを着て、『ロビンソン・クルーソー』を、もう一度読んでみたくなってきましたね。