パンは何度食べても、飽きないものですね。朝にパンを食べて、昼にパンを食べる。けっして珍しい風景ではありません。
きのうもパン、きょうもパン、そしてあしたもパン。そんなこともあるでしょう。
さらにはパンは主食であり、副食であり、間食でもあります。サヴァランをもしパンの一種と考えるなら、立派なデザートでもありましょう。日本人がこれほどパンに熱心な時代は、これまでにあったでしょうか。
千年後の歴史学者は、二十一世紀を「パンの時代」と名づけるのではないかと思われるほどです。
今、フランスに「カイザー」というブーランジェリーがあります。誤解を恐れずにいいますと、パンでいちばんのパン屋ではないでしょうか。エリック・カイザーが焼くパンなので、「カイザー」。モンジュ通り八番地に「カイザー」の本店があります。
なんの世界にも天才はいるもので、エリック・カイザーは間違いなく、パンづくりにおける天才。では、エリック・カイザーはいかにして、パンづくりの天才となったのか。
諸国遍歴の旅によって。エリック・カイザー自身、「旅で腕を磨いた」と、語っています。エリック・カイザーは、パン屋の息子。六歳から働きはじめ、毎日、16時間のパンづくり。それでも飽きたらず、旅に旅を重ねて、あらゆるパンづくりを学ぶ。
パンの武者修業の後、パン学校の先生に。先生に甘んじることなく店を開いたのが、「カイザー」なのです。
「カイザー」を頂点として、パリはパンのメッカでもありましょう。でも、歴史を遡れば、贅沢なパンが禁止されたこともあったとか。十八世紀のフランスで。ジョセフ・フーシェの時代、白パンを食べることが、禁止。シュテファン・ツワイク著の『ジィゼフ・フーシェ』に出ている話なのですが。
同じように制限されたのが、ハンカチの枚数。当時のフーシェの考えからすれば、「フランス人はあまりにも多くの枚数を持ちすぎている」と思われた。もっともハンカチは常にダースで数えた時代ですからね。
ほんの二、三マイの麻ハンカチで。美味しいパンを買いに行くとしましょうか。
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