スカートは主に女の人の服装ですよね。
英語のスラングで「ア・スカート」と言うと、「若い女性」を指すことがあるんだそうです。
でも、男の服にもスカートがないわけでもありません。たとえばフロック・コートの裳裾の部分は、「スカート」と呼ばれます。つまり腰の切替線の下の部分を。
日本人ではじめてスカートを穿いた女性。たぶん、津田梅子でしょう。明治四年十月の洋行の際に。
津田梅子の外、アメリカに留学した、山川捨松、吉益亮子、上田貞子、永井繁子も同じくスカートを穿いていたという。
「………裳袴の裾長く靴の踵の没するのを小気味よく蹴つて歩む伊達な態に瞳を凝らした。」
明治四十一年に、生田葵山が発表した小説、『都会』に、そのような文章が出てきます。
これは田舎から東京に向かう列車の中から見た横濱の町の異人の様子。
生田葵山は、「裳袴」と書いて、「スカート」のルビをふっているのですが。
スカートが出てくる小説に、『モンパルナスの灯』があります。1923年に、フランスの作家、ミッシェル・ジョルジュ・ミッシェルが書いた伝記小説。もちろん、モジリアーニの伝記なのです。
ミッシェルは、アメデオ・モジリアーニとほぼ同世代の作家ですから、興味深い内容にもなっています。
「………アリコ・ルージュが、女の子が母親のスカートをつかんでいるように、彼をとらえているのだった。」
「彼」がモジリアーニであるのは言うまでもないでしょう。
「アリコ・ルージュ」は彼女のあだ名。もともとは「小豆」のことなのですが。たまたまモンパルナスの乾物屋の娘なので、「アリコ・ルージュ」。
ある時、偶然に、モンパルナスの街角で出会って、仲良しになるきっかけの場面として。
ある日ある時。モジリアーニの絵が六フランに売れて。なじみの床屋が六フランで買ってくれたのです。その後、11000フランで、あるアメリカ人に売れた。
『モンパルナスの灯』には、そんな話も出てきます。
「………新聞記者、劇場の支配人、俳優、批評家たちが、みんなスモーキングを着込み、まっ白なワイシャツを着て、ごちゃまぜにいりまじって寝そべっていた。」
これは当時のとあるカフェでの様子として。
ここでの「スモーキング」は、タキシードのこと。イギリスで言うところの、ディナー・ジャケット。
故き佳き時代のモンパルナスの一光景なのでしょう。
どなたか1910年代のスモーキングを仕立てて頂けませんでしょうか。