エジプトとエターミン

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エジプトは、ナイル川に沿った国ですよね。エジプトの首都はカイロ。その昔、古代エジプト文明を誇った国でもあります。
昭和二十八年にエジプトを旅したお方に、谷川徹三がいます。優れた哲学者であった人物。
谷川徹三は、カイロでは、「メトロポリタン・ホテル」に泊まっています。谷川徹三はまず風呂を使い、出た後、「シトロン・プレッセ」とマンゴーを注文。
谷川徹三の随筆『ピラミッドの中』に、そのように書いています。

「オードゥブルの中に油でいためた米飯をブドウの葉で包んだものがあって、それはエジプト特有のものだとのことだった。」

谷川徹三は紀行文の中に、そんなことも書いています。食後の果物は、「ピスタッシュ」。マンゴスチンに似たフルーツだったそうです。

「………気持のいい陽の光を満身に浴びてホテルのテラスに寝そべり、初めてほっとしている。」

小林秀雄の紀行文『エジプトにて』に、そのような一節が出てきます。小林秀雄もまた、偶然に昭和二十八年にエジプトを旅しているのです。
余談ではありますが、小林秀雄はこの時、はじめて写真機を持ったんだそうですね。
それにしても小林秀雄と谷川徹三。同じ時期に、同じ場所を旅しても、その印象がまったく異なっています。まあ、それが個性というものでしょうが。

エジプトが出てくる小説に、『百歳の人があります。1822年に、フランスの作家、バルザックが発表した物語。

「………凡庸な歓びとはエジプトのピラミッドと当世風のつまらぬ建築物ほどにちがう歓びをあたえる。」

また、『百歳の人』には、こんな描写も出てきます。

「娘とゆき会いませんでしたかね。赤いベルトをして、平織りのドレスを着て………」

これは「ベランゲルト」の科白として。
「平織りのドレス」だけでは、なんとも想像しにくいのですが。私は勝手に「エターミン」etamin を想ってしまいました。
「エターミン」はもともと「濾し布」のこと。それを後の時代にドレスにも使われるようになった生地なんだそうです。
柔らかい、軽い、ウール地。
どなたかエターミンの上着を仕立てて頂けませんでしょうか。

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