曼珠沙華は、花の名前ですよね。また、彼岸花とも。彼岸の頃、満開となるからでしょう。仏教の方では曼珠沙華に触れると、悪から遠ざかるという伝説があるんだそうですね。
赤い、御墓の曼珠沙華 曼珠沙華 けふも手折りに 来たわいな
北原白秋の『思ひ出』に、そんな詩が出てきます。
🎶 赤い花なら 曼珠沙華 オランダ屋敷に 雨が降る
昔、流行りましたね。たしか『長崎物語 』という歌だったような記憶があるのですが。
私の青春はもはや堅い血管となり、
その中を曼珠沙華と夕陽とがゆきすぎる。
中原中也の詩集『山羊の歌』に、そんな一節が出てきます。
中原中也の詩そのものははやくからできていたのですが。なかなか出版が決まらなかったようです。結局、昭和九年になって、「文圃堂」が引き受けてくれたのです。初版は、二百部だったと伝えられています。
今、もし『山羊の歌』が発見されたなら、天文学的な金額になるでしょう。
「カフスボタンと、カラを止める圖の如きものと、首のボタンと、お母さんの机の引出しか、それとも………」
昭和五年の、中原中也の手紙に、そんな内容が出てきます。日付は、八月五日。故郷のお母さんに宛てて。
中原中也もかなり洒落者だったようです。
中原中也の写真でよく見るのが、黒のマント。生地はたぶんメルトンでしょう。一枚仕立ての襟つき、ボタンつき。
どなたか黒のメルトンのマントを仕立てて頂けませんでしょうか。
「中也」と名づけて大切にいたしますから。