リチャードは、男の人の名前にもありますよね。たとえば映画俳優のリチャード・ギアだとか。主に、アメリカ、イギリスに多い印象があります。
ヨオロッパなら、「リカルド」に相当するのでしょうか。
イギリスの歴史の中でリチャードを探しますと、「リチャード三世」でしょうか。もちろん、実在の人物であります。リチャード三世が今なお語り継がれるのは、シェイクスピアの影響が大きいのではないでしょうか。
戯曲の『リチャード三世』ですね。シェイクスピアの『リチャード三世』は、1592年頃の作ではないかと考えられています。今から四百年以上前のことなのですが。
リチャード三世は英国王でありながら、戦死したお方。珍しいことでしょう。1485年8月
22日のこと。
これによってあの有名な「バラ戦争」が終ったんだそうですが。
それはともかく、シェイクスピアはリチャード三世の没後、八年ばかり後に『リチャード三世』の筆を採った計算になります。ちょうど、リチャード三世の評判がとても悪かった時代に。
劇中のリチャード三世も、極悪非道の人物として描かれているのも、そのためなのでしょう。
日本でも、『リチャード三世』の影響から、実在のリチャード三世も悪人説が罷り通っているようですが。でも、本国のイギリスではむしろ、賢王だったとの説もあります。
それはさておき、現在、リチャード三世擁護論があるのは間違いありません。
たとえば、イギリスには「リチャード三世協会」があるらしい。これは英国の作家、ウイグラムの創設によるもの。1959年のこと。その目的はひとつ。リチャード三世の名誉回復。そのために出している雑誌が、『ザ・ガーディアン』。イギリスで「ガーディアン」というと、リチャード三世擁護派の意味になるんだそうですが。
1990年に、『リチャード三世を愛した女』を発表したジーン・プレイディもやはり「リカーディアン」のひとりと言ってよいのかも知れませんね。
リチャード三世が出てくるユウモア小説に、『フランシス・ベイコンと手直し屋』があります。1957年に、P・G・ウッドハウスが発表した物語。
「ここで名前を明かしておきましょう、バーベッジという男です。」
ここでの「バーベッジ」は、シェイクスピア時代の俳優、リチャード・バーベッジのことなのですが。
また、P・G・ウッドハウスには、1930年に発表した短篇『仮装パーティの夜』もあります。この中に。
「船乗り服が品性に欠けているとはとても思えません。多くのイギリスの偉人たちが、船乗り服を着ているではないか。」
そんな会話が出てきます。「船乗り服」。私はここから勝手に、「リーファー」reefer を想像してしまいました。
リーファーはダフル前、八つボタン型の上着のこと。
「リーファー」の言葉は、1883年「テイラリング・ワールド」紙10月2日号に、すでに紹介されています。
どなたかリーファーを仕立てて頂けませんでしょうか。