ピーターとビコルヌ

ピーターは、男の子の名前にもありますよね。
ふつうPeter と書いて「ピーター」と訓みます。
たとえば、「ピーター・パン」だとか。ピーター・パンは物語の主人公ですね。でも、実際に会うこともできます。
ロンドンのケンジントン・ガーデンズに行けば。ピーター・パンの銅像が建っていますから。
スコットランドの作家、ジェイムズ・バリイが、1904年に発表した幻想劇がピーター・パンのはじまり。
そしてピーター・パンの物語は、ケンジントン・ガーデンズが背景になっているので。
架空のピーターもあれば、実在のピーターもあります。
これも一例ですが、ピーター・オトゥール。
ピーター・オトゥールは1932年8月2日。アイルランド生まれ。ゴールウエイ於いて誕生。
ピーター・オトゥールはもちろんイギリスの映画俳優。
1962年の映画『アラビアのロレンス』で主役を演じています。
ピーター・オトゥールは、188センチの長身。そしてもうひとつ、エメラルド・グリーンの瞳。
『アラビアのロレンス』でも、エメラルド・グリーンの目が特徴的でありましたね。ただ、実際のロレンスはそれほど長身ではなかったようですが。
ピーター・オトゥールはサングラス愛好家でもありまして。いつも瞳の色に合わせた緑色のレンズを好んだそうですが。
ピーター・オトゥールはシリアスな役柄だけでなく、コミカルな演技もできた俳優。
たとえば1969年の映画『おしゃれ泥棒』だとか。オオドゥリー・ヘップバーンとの共演。当然「おしゃれ泥棒」役を好演しているのは、ご存じの通り。
ピーターが出てくる小説に、『嘔吐』があります。フランスの作家、ジャン=ポール・サルトルが、1938年に発表した日記体の小説。

「彼は無邪気な態度で、パンとガラ・ピーターの板チョコを食べる。」

1932年のある日の木曜日の『日記』として、そのように出ています。
ここでの「ガラ・ピーター」は、スイスのミルク・チョコレエト。
スイスのダニエル・ピーターが世界ではじめてのミルク・チョコレエトを考案して、好評になったので。
たぶんサルトルも、「ガラ・ピーター」のミルク・チョコレエトがお好きだったのでしょうね。
サルトルの『嘔吐』を読んでおりますと、こんな会話も出てきます。

「あたし、あの二角帽が大好きよ。シックなのですもの。」

「二角帽」。原文では「ビコルヌ」bicorne になっています。
ビコルヌはナポレオンがかぶっていた帽子のこと。帽子の前後に二つの角があるように想えるので、「ビコルヌ」。英語なら、「バイコーン」になります。
昔むかし。帽子のブリムがあまりに広いので、上に折り曲げてかぶったのがはじまり。
どなたか現代版のビコルヌを作って頂けませんでしょうか。