ジュレとジレ

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ジュレは、フランス料理のひとつなんだそうですね。日本ふうにいえば、「ゼリー寄せ」でしょうか。
フランスでの「ジュレ」は、「ゼリー」のことなんだとか。また、「凍る」の意味にもなるんだそうですね。
ジュレに似たものを無理矢理日本で探すとすれば。「煮凝り」が近いかも。煮凝りは作るというより、できてしまうものかも知れませんが。
ジュレが出てくる小説に、『失われた時を求めて』が。もちろんフランスの作家、プルーストですよね。『失われた時を求めて』の、「花咲く乙女たちのかげに」の章に。

「ここは秘伝の牛肉のゼリー寄せをつくらなくてはと張り切り……」

これはスワン家の家政婦、フランソワーズのひとり言なんですね。ノルポワ侯爵を食事に招くことになって、料理を考える場面。「牛肉のゼリー寄せ」のところに、「ブーフ・ア・ラ・ジュレ」とルビがふってあります。
「ブーフ・ラ・ラ・ジュレ」が、ド・ノルポワの前に。と、侯爵は美味しく食べて。お代わりまでするんですね。
実は、マルセル・プルースト自身、「ブーフ・ア・ラ・ジュレ」がお好きだった。

「あなたのジュレと同じように、私文体も光輝き澄み切って堅牢なものとなりますよう。」

マルセル・プルーストは、セリーヌに宛てた手紙の中に、そのように書いています。1907年7月12日付の手紙に。
セリーヌ・コタンはプルースト家の家政婦。セリーヌがプルーストのために、ブーフ・ア・ラ・ジュレを作ってくれた。それが、プルーストの文体のようであった、と。これはもう、絶賛ですよね。また、『失われた時を求めて』には、こんな描写も。

「シャツの胸飾りにしゃきっと糊があたり、白いベストもずれないんです。」

これはシャルル・スワンの科白。「白いベスト」。たぶん正装用のジレのことでしょう。
いつの日にか。正装用のジレで。ジュレを食べてみたいものですが……。

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