カフェはなによりの憩いの場所ですよね。
美味しいコーヒーをゆっくりと飲んで。また、時と場合によってはワインを傾けて。あるいはランチやディナーも。さらには、本を読んだり、手紙の書いたり。
今はカフェですが。昔、「ブーニャ」 boughnat と呼ばれた時代があるんだそうですね。「ブーニャ」はごく簡単にいって「炭屋兼業の居酒屋」。
フランス、オーヴェルニュ地方からパリにやってきた人たちが、炭を売る。このオーヴェルニュ人の炭が売れる。というのは、オーヴェルニュ人は働き者で、買って炭をアパルトマンの戸口まで届けてくれる。
オーヴェルニュの炭屋は炭で稼いで、ワインを仕入れ、ワイン売った。それで、「炭屋兼業の居酒屋」に。そしてやがてはコーヒーをも出すように。そんなわけで、一時代前のパリのカフェの経営者はたいていオーヴェルニュ人だったそうですね。
パリの有名なカフェにもたくさんありますが。たとえば、「クーポール」。今、「クーポール」に行ってみると。カフェというよりもむしろ、大型のビストロかレストランの感じ。でも、そもそもはカフェとしてはじまっています。
「カフェ・クーポール」は、1927年に、ルネ・ラフォンが開いた店。1920年代にはここは空地で、木材置場になっていたという。それをルネ・ラフォンが買って、カフェに。ルネ・ラフォンは友だちに手伝ってもらって。建築家は店を作り、画家は内装の絵を描いた。今でもクーポールの内部に有名画家の壁画が遺っているのは、そのためなんですね。
1927年12月20日の夜。「ラ・クーポール」の開店祝いが賑やかに行われたという。このオープニング・パーティーには、ジャン・コクトオやレオナール・フジタなど、多くの芸術家たちが招待されています。
少し後の時代には、サルトルやヴォーヴォーワールなども通った店でもあります。カフェが出てくるミステリに、『最後の音楽』が。イアン・ランキンが、2007年に発表した物語。
「グッドイアは紅茶飲み、シーボンはアメリカンにエスプレッソを特別に足してもらった。」
シーボン・クラークは、エディンバラ警察の、部長刑事。トッド・グッドイアは、その部下という設定。「アメリカンにエスプレッソ……」。そんな飲み方もあるんですね。また、こんな描写も。
「首にタータンのマフラーを巻いている。」
これはロシアの詩人、アレクサンドル・トドロフの着こなしなんですが。たぶん、スコットランドに来てから、買ったものなんでしょう。
さて、タータンのマフラーで。お気に入りのカフェい行くとしましょうか。