一等車と帽子

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一等車は、昔ふうの言い方ですよね。
今のグリーン車に近いのかも知れませんが。
以前は、まず一等車があって。二等車があって、三等車があって。一等車と二等車の間に、「特二」というのもあったり。さらには一等車の上に、特等車もあったようですね。
世の中、いろんな人がいらっしゃって。「静かだろう」と思ってグリーン車に乗ると。それが案外静かでもなかったりして。「スーパー・グリーン車を作って欲しい」と言ったとか。
ロシアのチェーホフに、『一等車の客』があります。1886年に発表された短篇。

「わたしたちは汽車の旅をつづけながら、道中ずっと食べ通しで、シャンパンを飲み、いいご機嫌でしたよ!」

これはほんの一例で。チェーホフを読んでいると、よくシャンパンの場面が出てきます。いや、題名自体、「シャンパン」というのもあります。

「それはすべてダイヤモンドのごとく輝き、森の小川のごとく澄み、蜜のごとく甘い。」

そんなふうにはじまって、えんえんシャンパンを賛美しています。もちろん、チェーホフはシャンパンがお好きだったのですね。
では、チェーホフはどんなシャンパンがお好きだったのか。あるいは、ヴーヴ・クリコかと。チェーホフの物語にヴーヴ・クリコが出てくるので。
チェーホフが1885年に発表した小説に、『帽子の季節』が。この中に。

「春になったので、彼はヴァン・ディック・スタイルの帽子を買い、大いにご満悦だった。」

「彼」は、イワン・イワーヌイチという男。「ヴァン・ディック」。これはたぶん「ヴァン・ダイク」のことでしょうね。ヴァン・ダイク風の帽子。中世の騎士が被っていたような、ツバの広い帽子。
さて、ツバ広の帽子を被って。一等車で旅したものですね。

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