マルタとフラード

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マルタで、名画でといえば。『マルタの鷹』でしょうか。ダシール・ハメットの原作。監督は、ジョン・ヒューストン。映画会社は、ワーナー・ブラザーズ。1941年の映画。
ジョン・ヒューストンにとって『マルタの鷹』は、監督第一作。それ以前には、脚本家。
ジョン・ヒューストンはどうしても監督になりたくて。映画会社には何度の、「監督をやらせてもらいたい……」と。で、はじめて、OKが。
というのはワーナーとしては『マルタの鷹』は、まず当たらないだろう、と。当たらなければジョン・ヒューストンも監督を諦めるだろう、と読んでいたらしい。
ところがジョン・ヒューストンは個人的にもハメットと面識があって。大の愛読者。腕によりをかけたんですね。結果は、『マルタの鷹』大ヒット。
『マルタの鷹』の主演が、ハンフリー・ボガート。『マルタの鷹』もそうなんですが。H・ボガートは、チョーク・ストライプのダブルのスーツがお似合いですね。ボガートのダブルの、チョーク・ストライプは、1939年の映画『彼奴は顔役だ!』が最初のようです。共演は、ジェイムズ・キャグニー。ここでのボガートは暗黒街のボスという設定。
1938年のH・ボガート映画が、『キー・ラーゴ』。1938年のサリンジャーの小説が、『エスキモーと戦う前に』。1938年『ザ・ニューヨーカー』に発表された短篇。この中に。

「彼の整った顔、短く刈り込んだ髪、服の仕立具合、フラールのネクタイの模様は………」

これは突然、ジニーの前にあらわれた青年の姿なんですね。「フラール」 foulardは、綾絹のネクタイ地。今、私は1976年刊、繁尾 久 訳を開いているのですが。なぜ「フラード」でなく「フラール」なのか。
フラールももともとインドの絹ハンカチで、それがフランスに伝られた生地。その後、イギリスなどにも。その故事来歴から「フラール」としたのか。それともなにかフランス風の薫りが感じられたからなのか。
小説に描かれたスタイルを読むのは、愉しいですね。

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