ノルウエイとスリーピース

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ノルウエイといえばたぶん、『ノルウエイの森』を想うでしょうね。
映画の、『ノルウエイの森』を。村上春樹の、『ノルウエイの森』を。そしてさらに、ビートルズの『ノルウエイの森』を。
まさか、「うん、ノルウエイには森があってね………」なんて説明しはじめる人は少ないでしょう。
しかし、ビートルズでもない、村上春樹でもない、まして映画でもない「ノルウエイの森」があるんです。例によって例のごとく、ミステリの中に。1986年に、ロブ・カントナーが発表した『探偵 ベン・パーキンズ』に、「ノルウエイの森」が出てくる。こんな風に。

「〈ノルウエイの森〉 は、ベルビルのフォード湖に臨んだ三百戸からなる集合住宅である。」

アメリカ、オハイオ州、シンシナティの近くに、設定されています。この「集合住宅」にひとつ欠けているのは、「超高級」ということでしょう。とにかく許可なしにこの界隈に立ち入ることさえできないのですから。
『探偵 ベン・パーキンズ』の主人公はもちろん、ベン・パーキンズ。ふだんは「ノルウエイの森」の管理の、監督。つまり「ノルウエイの森」には何人かの管理人がいて、その人たちを監督するのが、役目。その一方で、時に探偵にもなるというわけなんですね。
『探偵 ベン・パーキンズ』は、著者のロブ・カントナーにとっての処女作。さる人に言わせると「処女作」は使ってはいけない、と。「第一作」と言え、と。たしかにその通りでもありましょう。
しかし。私ごとき気の小さい人間が「処女作」を使えないとすれば、たぶん一生使えない。せめてミステリの「処女作」くらいは使わせて欲しいのですが。
ロブ・カントナーの処女作『探偵 ベン・パーキンズ』の中に。

「糊のきいた白いワイシャツに、黒いピンストライプの三つぞろいのスーツを着こなしていた。」

これはある会社の重役、セス・フリントの着こなし。
場所は、シンシナティ。季節は、盛夏。でも、スリーピース。まあ、気分が引き締まって良いのでしょうね。

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