かすてらとカンヴァス

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かすてらは、和菓子なのか洋菓子なのか。難しいところですよね。もし洋菓子ならカステラと書いたほうがいいし。あるいは和菓子なら、かすてらと書きたくもなってきますし。
かすてらは、ポルトガルの「パン・デ・ロ」が源だったとの説もあります。「パン・デ・ロ」のロは、布地の「絽」と関係があるらしい。そうすると、ファッションともまんざら無関係ではないのかも知れませんね。
江戸期、延宝四年の春に。江戸で句会が開かれて。その頃、桃青を名乗っていた芭蕉も出ています。この席で、芭蕉。

玉子の前や 打ち砕く覧

と詠んだ。これを受けて信章は。信章は、後の山口素堂なのですが。山口素堂は芭蕉の吟に続けて。

伝聞唐の 羊羹かすていら

つまり芭蕉の「玉子」から「かすていら」を想ったわけです。素堂は以前、長崎に行ったことがあって、おそらく「かすていら」を経験しているのでしょう。それはともかく江戸時代には、「かすていら」の言いかたもあったものと思われます。
明治四十年に京都に行ったのが、夏目漱石。夏目漱石は京都では東本願寺にも立ち寄っています。大谷句仏に会って。大谷句仏は、東本願寺、二十三世管長だったお方。
夏目漱石が東本願寺を出る時、大谷句仏は漱石にかすてらを手渡しています。このことは漱石の『日記』にも出ています。

「主人は菓子皿のカステラが一切足りなくなった事には気が着かぬらしい。」

夏目漱石著『吾輩は猫である』の一節です。ここでは「カステラ」となっています。また『吾輩は猫である』には、こんな描写もあります。

「日本のスタンランが好んで吾輩の似顔をカンヴァスの上に描く様になったら………………」。

カンヴァスは、キャンヴァス canvas とも。これはラテン語の「カナビス」 cannabis から出ているんだそうです。「麻繊維」の意味。はるか遠い時代には麻のキャンヴァスだったのでしょう。
「麻のキャンヴァス」を着て、カステラと参りますか。

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