トーストとトレーナー

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トーストは、美味しいものですね。食パンをトースターでカリッと焼いて。バターを添え、ジャムを添えて、いただく。もちろんバターやジャムは一例で、好みによっていろいろと選べること、言うまでもありません。
食パンにも様ざまな種類があって、選ぶのに迷ってしまうほどです。その中のひとつに、『プルマン・ブレッド」があります。ほぼ角形に近い食パンのこと。これは、その昔、プルマン・カーの食堂車で出していた食パンなので、「プルマン・ブレッド」の名前があります。
十九世紀後半、アメリカのプルマンは英國にも伝えられて。ロンドンとベッドフォードの間を走ることに。この食堂車で、角形食パンが出たんだそうですね。
角形であろうと山形であろうと、食パンの厚さは微妙であります。毎朝の食卓で、食パンの厚さが二ミリ違っていただけで、味が変わってくるでしょうね。
むかし、アメリカのケネディ大統領が現役のころ。ある記者会見で、ケネディが左手に白い包帯を巻いていて。とある記者がすかさず訊いた。「どうなさったのですか?」
「ちょっと食パンを切っていてね…………」。
ここから分かることがひとつ。J・F・ケネディは、食パンを塊で買って、それを焼く前に切ってから、召しあがっていたのだろう、と。つまり食パンの厚さに煩かったのかも知れませんね。
トーストが出てくる随筆に、『うさぎの ミミリー』があります。庄野潤三が、2001年に発表した作品。

「ここはくつろげて、トーストもうまく焼けておいしい。」

これは庄野潤三が大阪のホテルで、朝食を食べている場面。
庄野潤三は、食パンにバターを塗り、さらにマーマレードを加えるのがお好きだったようですが。
庄野潤三の小説に、『鉛筆印のトレーナー』があります。

「前に買ってあげた鉛筆印のトレーナーを着ていた。」

これは物語の主人公が、孫娘に贈ったトレーナーのことなのですが。
はじめて私がトレーナーを買ったのは、十六歳の時。映画で観た石原裕次郎が着ていたので。「トレーナー」の名前さえ知りませんでした。探して、探して……………。
やっと見つけた丸首シャツには、「Van」と印が入っていたのです。
それはともかく。今、トーストもトレーナーもすっかり日本語として定着しているようですね。

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