シャンパンは、美味しいものですね。今、ふつう、「シャンパン」と言います。でも、ちょっと洒落た人なら、「シャンパーニュ」。もし「シャンパーニュ」と言って気障に聞こえないなら、紳士なのでしょう。
むかしの日本では、「三鞭酒」の字を宛てたことがあるんだそうですね。これで「シャンパン」と訓んだわけです。
シャンパンがお好きだったのが、内田百閒。なにしろ、『おからとシャンパン』の随筆をお書きになっているくらいですから。
おからにシャンパンを合わせるくらいですから、シャンパンも幅が広い。なんとなれば、「シャンパン茶漬け」とか。ごはんの上にキャヴィアを盛りまして。この上からシャンパンを注いで。まあ、スプーンで頂くわけであります。「シャンパン茶漬け」にするかしないかはさておき、シャンパンの応用範囲が広いのは、間違いないでしょう。
シャンパンが出てくる小説に、『剃刀の刃』があります。1944年に、サマセット・モオムが発表した物語。ただし物語の背景は、1920年頃の、巴里におかれているのですが。
「彼はシャンペンを一本註文した。それで彼女は、彼が紳士だと納得がいった。」
この場所は、「マキシム」。彼は、彼女を誘って、マキシムへ。で、食前に、シャンパンを。その時の、彼女の感想なんですね。
『剃刀の刃』には、こんな描写も出てきます。
「エリオットはわざわざロンドンへ出かけて、新しいモーニング・コートや、薄紅がかった灰色の両前のチョッキや、シルクハットを買入れた。」
エリオットは、巴里のい住む英国 人 という設定。結婚式に出るための衣裳として。
「 薄紅がかった灰色」は、たぶんパール・グレイに、ローズがかすかに加えられているのでしょう。まったく、おしゃれもシャンパンも際限のないことですね。