スリーピング・バッグとスコッチ

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スリーピング・バッグは、寝袋のことですよね。寝袋でもスリーピング・バッグでもどちらでもよろしいのですが、これはほとんど理想の寝具であります。
まず第一に、場所を取らない。畳んで丸めておけば、昼寝の枕になるほどに。第二に、寝心地満点。暑くなく寒くなく。なんとなればエヴェレストの山頂でもいびきをかくことができるほどに。
第三に、寝相が悪くならない。いくら布団からはみ出そうとしても、はみ出せない。朝まで優雅なお姿を保てるのであります。
ことスリーピング・バッグの権威者は、スティーヴンソンでありましょう。かの『宝島』の作者、ロバート・ルイス・スティーヴンソンのこと。では、どうしてスティーヴンソンが、スリーピング・バッグの権威者であるのか。
スティーヴンソンは旅を好んだので。というよりも、転地療法。スティーヴンソンはあまり健康とはいえない身体だった。ためにわざと旅から旅を続けたのであります。1870年頃にも、たったひとりでフランスの田舎に出かけています。この旅の記録が、『旅は驢馬をつれて』なのです。フランスでは、驢馬の背に揺られての旅だったから。この時、スティーヴンソンは、独自のスリーピング・バッグを作ったもらっています。

「スリーピング・バッグはいつでも即座に役に立つ………………。」

と、書いています。そのスリーピング・バッグとは、表が防水布、裏が羊の毛皮という二重の寝袋だったのです。「スティーヴンソン形寝袋」とでも言えば良いでしょうか。
スティーヴンソンは、この旅で、フランスのいろんな人にも会っています。たとえば。

「年は四十五から五十の間、スコッチ織の服に手編みの短外套を一着に及び………………。」

もちろん旅で会った男の印象。「スコッチ織」は、もちろん今のトゥイードのことでしょう。むかしはよく「スコッチ織」と呼ばれたものです。
さて、「スコッチ織」の上着で、旅に出ましょうか。ただし驢馬はおりませんが。

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