ジェントルマンはわりあいとよく使う言葉ですよね。ジェントルマンは、紳士。紳士は、ジェントルマン。
では、ジェントルマンとはなんぞや。これが難しいんですね。ジェントルを分解すれば、ジェントルとマン。典雅と男。ならば、「典雅人」で意味が通るのかどうか。
ジェントルマンという英語は、1275年頃から用いられているんだそうでね。やがて千年にもなろうかというのに、今もって定義らしき説明もおぼつかない言葉も珍しいのではないでしょうか。
ジェントルマンだけでもお手あげというのに、「パーフェクト・ジェントルマン」という小説を書いたお方がいます。ジェフリー・アーチャー。ジェフリー・アーチャーが、1980年頃に書いた短篇に、『パーフェクト・ジェントルマン』が。邦題も、原題も、『パーフェクト・ジェントルマン』。中身を読んでもなるほど、「パーフェクト・ジェントルマン!」たぶん根っからの英国人である、ジェフリー・アーチャーにしか書けなかった物語であるのかも知れませんが。
「あのジェントルマン、きょうもくるか知ら………………。」
永井龍男著『小美術館で』 に出てくる会話。とある客に「ジェントルマン」と仇名している話なのですが。
永井龍男が、昭和二十九年に発表した短篇に、『眼ざまし時計』があります。この中に。
「頭からかぶる式のジャケツが、胸の円さを浮き出している。」
ここでの「ジャケツ」は、おそらくスェーターのことかと思われます。もし仮に、「前開き式の」であったなら、カーディガン。つまり、むかしはニット・ジャケットのことを訛って、「ジャケツ」。今や、懐かしい言葉になってしまいましたが。
いや、もちろん。ジェントルマンは今も現役の、立派な言葉であること申すまでもありません。