フレッドとフリーズ

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フレッドで、ダンサーでといえば、フレッド・アステアでしょうね。フレッド・アステアは、1899年5月10日。アメリカ、ネブラスカ州、オマハに生まれています。
フレッド・アステアは幼い頃から舞台に立っていたこともあって、着るものにはたいそう敏感なお方でもありました。まあ、ほんとうのところは、幼少期からおしゃれ感覚を持っていたのでしょうが。少なくともフレッド・アステアの場合、付け焼き刃ではありませんでした。
アステアといえば、すぐにイヴニング・ドレスの姿が想い浮かびます。が、年がら年中、燕尾服を着ていたわけではありません。
ふだん着のアステアはいつも、グレイ・フランネルのトラウザーズだったのです。1987年、八十八歳で世を去るまでの、少なくとも五十年間は、グレイ・フランネルズだったのです。
グレイ・フランネルズにピンクのシャツ、その頸元に、ペイズリー柄のスカーフ。ここまではアステアの真似もできるかも知れません。が、銀のバックルの付いた黒のスゥエード・シューズとなれば、ちょっと二の足を踏んでしまうのですが。
まあ、常に自分のスタイルを持っていることは、尊敬に値します。
フレッドが出てくる短篇に、『処女とジプシー』があります。1926年に、D・H・ロレンスが発表した物語。

「四十歳になる一人暮らしの叔父のフレッドは毎日、街に出かけていった。」

『処女とジプシー』には、こんな描写も出てきます。

「彼は明らかに三十歳を過ぎていたが、しゃれた仕草をするいい男だって。フリーズでできた腰までの両前の狩猟服を着て…………………。k

ここでの「フリーズ」 fr i ez e は、フリース f l e ec e とはまったく別物。フリースは羊毛のひと塊。「フリーズ」は厚手の紡毛地のこと。今はめったに見られないものです。
「フリーズ」はその昔、フリースランドで織られた生地なのでその名前があります。英語としては、1376年頃から用いられている言葉なんだとか。
なにか厚手のコートを羽織って、アステアの古いレコードを探しに行きたいものですが。

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