歌舞伎とガルボ・ハット

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歌舞伎は、日本の伝統藝能ですよね。歌舞伎を愛した作家に三島由紀夫がいます。そして三島が偏愛した女形が、歌右衛門だったのです。
六代目 中村歌右衛門。三島由紀夫は何度も歌右衛門の芝居を観、何度も対談しています。三島由紀夫には、『六世中村歌右衛門序説』と題する随筆があります。三島由紀夫はこの随筆の中で、口を極めて歌右衛門を絶讃しています。「序説」とは言いながら、かなり長文の礼讃詩になっています。
しかし「偏愛」は礼讃詩にとどまらず。贈物にもあらわれているのです。

「オパールを買ひましたが、小粒で、文句を云はれさうです。それでも予想外に高いのです。どうか悪しからず。」

これは三島が歌右衛門に宛てた絵葉書の一節。メキシコに旅して、歌右衛門への土産を買ったとの報告なのです。これは、サンタフェから出しています。宛先は、渋谷区宇田川町六ハ番地となっています。
歌右衛門をひと目見て、たちまちぞっこんとなったのが、ガルボ。グレタ・ガルボであります。
昭和三十五年の六月。歌舞伎のアメリカ公演。このアメリカ公演を観にきたのが、グレタ・ガルボ。ガルボは舞台の歌右衛門を観て、突然、雷に撃たれたかのように。
「歌右衛門の楽屋を訪ねたい」と、ガルボ。歌右衛門のほうではやんわりとお断りを。「今、汗をかいておりますゆえ………………」。それに対するガルボの答え。

「歌右衛門の汗が見たい!」

この時彼女が、ガルボ・ハットをかぶっていたのか、どうか。そこまでは存じませんが。

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