楠と靴下

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楠は、「くす」とも「くすのき」とも訓みますよね。どうして「楠」が「くす」なのか。いろんな説のある中で。「薬し」から「楠」が生まれたとも。
楠はまた、「樟」と書くこともあります。樟脳という時の「樟」。洋服簞笥に樟脳を吊るしておくと、服に虫がつきません。楠は、薬にもなる木なんでしょう。
よく、カンフル剤なんて言いますよね。「カンフル」は梵語で「純白」の意味なんだとか。楠のごく一部の白いエキスは、優れた薬効を持っているんだとか。
「龍角散」という薬があります。あの「龍角散」にも少量の樟脳のエキスが含まれいるんだとか。あるいはまた、「メンソレータム」にも樟脳が入っているんだそうです。
南方熊楠は、名前にちゃんと「楠」が入っています。南方熊楠は九人兄弟。そのたいていに、「楠」の字がついているとか。
明治三年に、大病を。熊楠が四歳の時に。熊楠は父に負われて、「藤白神社」
に。「藤白神社」は、大きな楠の木が祀られている神社。ここでお祈りしたところ、たちまち完治したという。また、南方熊楠はその時の状況を、晩年までありありと覚えていたそうです。
だいたい楠は日本列島の中で、南下するほど多い。北上するほど少なくなる木なのですね。
名前ではなく、姓名にも「楠」は少なくありません。たとえば、楠木正成とか。楠木正成は、鎌倉時代の武将。「大楠公」とは、楠木正成のことであります。楠木正成ではなくて、楠 正行が出てくる小説に、『不如帰』があります。徳冨蘆花が、明治三十一年に発表した物語。

「今日はね、楠 正行の話。僕、正行が大好きだけど、正行とナポレオンとどっちが偉いの?」

ここでの「楠 正行」は、ふつう楠木正行のこと。楠木正行は、楠木正成の息子。時に、「小楠公」と呼ばれることもあるようです。また、『不如帰』には、こんな描写も。

「浪子が仰ぎ臥しつつ黒スコッチの襪を編める手先と雪より白き枕に漂う寝乱れ髪の上にちらちらおどりぬ。」

浪子が靴下を編んだいる場面。「黒スコッチ」は、たぶんトゥイード糸なんでしょう。
トゥイード糸で、手編みで、靴下で。いいですね。手編み靴下に丈夫な靴。大きな楠を探しに行くとしましょうか。

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