クロークとクレエプ・ドゥ・シイヌ

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クロークは、よく使いますよね。ほんとうは、クローク・ルームというんだそうですが。
クロークを入れておく場所なので、クローク・ルーム。クローク c l o akは、マントのことです。たとえば、怪傑ゾロが着ているようなマントなどの。ここから「クローク・アンド・ダガー」というと「スパイ物」のことになります。「マントと短剣」というわけですね。
あるいは「クローク・アンド・スゥオード」は、日本の「チャンバラ劇」に似た表現。つまりは、「活劇物」のことです。
むかしの古い時計は、「クロック」 c l ock 。これは形がマントに似ているからなんですね。マントと大時計は親戚でもあるのでしょう。
クローク・ルームで生まれた人に、チャーチルがいます。かのウインストン・チャーチル。
チャーチルは、1874年11月30日のお生まれ。それも深夜のことでありました。この日、ブレナム宮殿では大舞踏会が開かれていて。チャーチルのお母さん、ジャネットはダンスの途中に産気づいて。寝室に戻るいとまもなく、客用のクローク・ルームで。
ジャネットは、夫のランドルフ・チャーチルと結婚してから7ヶ月半で、ウインストンを産んでいます。ウインストンはちょっとせっかちだったのでしょうか。
せっかちだからこそといってよいのかどうか。ウインストン・チャーチルのなによりの趣味は、レンガ積み。まあ、ちょっと珍しいご趣味ですよね。
なんの必要もない所に、とにかくレンガを積む。レンガを並べて、重ねては、セメントを挟み。セメントを挟んでは、レンガを。この繰り返しがチャーチルにとって無上の悦楽だったという。もっとも敷地が、航空写真が必要くらいの広さですからの趣味でもあったのでしょうが。
クロークが出てくるミステリに、『矢の家』があります。英國の作家、アルフレッド・エドワード・ウッドリー・メイソンが、1924年に発表した物語。余談ですが、『矢の家』は、ミステリの古典であり、名作とされている小説です。

「ミシェルは二人をクロークに案内したが、そこから出てくる途中でエスピノーザが加わった。」

エスピノーザは、ワイン商という設定。また、『矢の家』には、こんな描写も出てきます。

「中には目の覚めるような、緑のクレープデシンの服が入っていた。」

ここでの「クレープデシン」は、クレエプ・ドゥ・シイヌのことでしょう。むかし、中国の縮緬が珍重されたところからの名前。多く女性のドレスなどの生地に使われるもの。ただし、クレエプ・ドゥ・シイヌの男物がまったくないでもありません。
「目の覚めるような」クレエプ・ドゥ・シイヌのシャツを、クロークに入れておきたいものですが。

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