パイプは、パイプ煙草のパイプですよね。パイプに、刻んだ煙草の葉を詰めて吸う方式のものであります。
パイプで、名随筆でといえば、『パイプのけむり』でしょうか。もちろん、團 伊玖磨製ですね。
團 伊玖磨には、『不心得 12楽章』の随筆集もありまして。その「第一楽章」が、『女ぎらい』。
「僕がその前半生で女にほうけていなかったなら、僕は今ごろ大作曲家になっていたに違いない………………」。
それで、『女ぎらい』。ということは、若き日の團 伊玖磨はよほど…………………、なんて想像もしてしまうのでありますが。
團 伊玖磨は、「帽子すき」だったようですね。
「僕は、今まで、赤ちゃん帽、学帽、中折、カンカン帽、パナマ帽、軍帽、等、等………………」。
昭和四十年『アサヒグラフ』10月1日号に、そのように書いています。『帽子』と題して。
古今東西の随筆の中で、と大風呂敷を拡げますと。この團 伊玖磨の『帽子』こそ、もっとも多くの種類の帽子が列挙されている随筆でしょう。だから、團 伊玖磨は「帽子すき」と申しあげたのですが。
ところで、パイプの出てくるミステリに、『指はよく見る』があります。1945年に、ベイナード・ケンドリックが発表した物語。
「安楽椅子、その傍のスタンドのパイプかけ………………」。
これは、デニス・フィルモアの寝室の様子。また、『指はよく見る』には、こんな描写も出てきます。
「縞のあるモヘア織りのグレイの服のしたには、がつしりした広い肩幅があった。彼は高価なパナマ帽をぬぎ………………」。
そもそもパナマは高いものですが。丸めると指環を通るパナマは、今なら百万円くらいでしょうか。これは、手間賃。あまりにも細く裂くので、編むのに一年くらいかかるからなんですね。
パイプでも燻らせながら、気長に待つとしましょうか。