機能とキャラコ

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機能は、使いやすいことですよね。鋏ひとつだって、使いやすいものと、そうではないものとがあります。つまりは機能性の高い鋏と、機能性の低い鋏とが。
機能は気にとめるのか、気にとめないのか。ひとたび気にしはじめますと。毎日、お世話になる箸だって、使いやすいものが稀にあったりするものです。
人によっては、「使いやすいものこそが美である」と考えたりもするようであります。つまりは、機能美。
三島由紀夫は、『機能と美』という随筆を、こんなふうに書きはじめています。

「飛行機が美しく、自動車が美しいやうに、人体は美しい。女が美しければ、男も美しい。」

うーん。そうでしょうか。たしかに三島由紀夫ご自身の「人体」は、お美しくあったのかも知れません。が、私なんぞは風呂場の鏡を見るに耐えない。「人体は美しい」。そうあって欲しいとは思いますが。これまた、理想と現実なのでしょうか。
でも、強弁すれば。人体が必ずしも美しくはないので、美しい服装が必要である。そんな考え方もあるのでしょう。
三島由紀夫は別の随筆で、尾崎紅葉のことにも触れています。

「今日なほ、紅葉は美髯を蓄へた立派な明治の文豪であり、鏡花はこれよりも若い才気煥発の白面の青年といふ感じがする。」

そんなふうに書いています。尾崎紅葉が、明治二十二年に発表した小説に、『風流 京人形』があります。この中に。

「ヅボンは薄羅紗の千筋、小紋置いたるキヤリコの鉢巻せる麦殻帽子を弓手に持ち、右にウアイウオレットの香ふ絹ハンケチを………………………」。

と、あります。これは「菱郎」という男の様子。紅葉は『風流 京人形』の中ではヴァイオレットのことを、「ウアイウオレット」と書いているのですが。
「キヤリコの鉢巻せる」とは、ストロー・ハットに、コットンのハット・バンドを巻いて、の意味かと思われます。
「キヤリコ」、これもまた明治語なのでしょう。インドのカリカット港から船出したコットンだったから、「キヤリコ」。それがのちに「キャラコ」になったものです。広く上質の綿布のこと。
キャラコでなにか機能性あるシャツを作りたいものではありますが………………。

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