ポップ・アートとポプリン

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ポップ・アートはあまりにも簡単すぎて難解な芸術ですよね。藝術よりも芸術のほうが似合うのかも知れませんが。
ポップ・アートからアンディ・ウォーホルを想起するのは、それほど難解ではないでしょう。マリリン・モンローだとか、エルヴィス・プレスリーだとか、キャンベル・スープだとか。
これらの複製をシルク・スクリーンで仕上げると、ポップ・アート。すなわち芸術になるわけですね。
ポップ・アートが出てくる小説に、『三匹の蟹』があります。大庭みな子が、1968年年に発表した物語。小説家としての第一作であると同時に、大庭みな子の代表作でもあります。

「ロンダ、近頃流行のポップ・アートなんて真似はやめなさい。君は大学で講座が持てる身分なんだから、もっと真面目な仕事をしなくちゃ駄目だ」

これは、あるパーティーでの「フランク」という男の科白。場所は、アラスカに設定されています。このパーティーには「桃色シャツ」が出てきます。桃色のシャツを着ている男だから、「桃色シャツ」。

「桃色シャツはたずねた。彼は桃色のシャツの上にツヰードの上衣を着ていた。」

その「桃色シャツ」は、奥さんが勝ったくれたものなんだとか。
1968年、利雄から美奈子に宛てた手紙があります。その中に。

「鉄ちゃんからj e anをSe arsで注文して呉れといはれてるのですが、カタログによると一定のヒップには一定のウエストが決っているので、これが合はないときどちらに合せて買ったら良いか御一報下さい。」

19687月16日になっています。シトカから新潟に当てて。美奈子は、大庭みな子の本名。利雄は、ご主人の名前。
ポップ・アートが出てくる短篇に、『ポップ彫刻家』が。アメリカの作家、アート・バックウォルドが書いた物語。
『ポップ彫刻家』の主人公は、奥さんに頼まれて、夕飯の買物に。ハインツのケチャップと、キャンベルのポーク&ビーンズと。
買物の後で、美術館に立ち寄って、帰宅。ところが、買物を美術館に置き忘れて、取りに戻る。戻ってみれば、置き忘れた買物がポップ・アートの一等賞に選ばれていたんだとか。
アート・バックウォルドには、『ヨーロッパ商人気質』の短篇もあって。

「あなたはポプリン地の、できればボタン・ダウン・カラーのが欲しいと答える。」

これはロンドンの店で、アメリカ人がシャツを買う場面。結論だけを申しますと。ここでの主人公はボタン・ダウン・カラーは買えなかった。代りに英国式のシャツを一ダース買うことになった、と。
ポプリンは、緻密に織られた上質のシャツ地。もっともシャツ地だけとは限りませんが。
ただ、シャツを注文する時、「ポプリン」の生地名くらい識っておいたほうが良いでしょう。でも、ポップ・アート風の柄は選びませんように。

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