ペニイ・ブラックは、昔の英國の切手のことですよね。ペニイ・ブラックの登場は、1840年5月1日のこと。
ペニイ・ブラックは、黒い凹版印刷で、値段が一ペニイだったので、通称「ペニイ・ブラック」。もちろん、ヴィクトリア女王の横顔が印刷されていたのですが。
ペニイ・ブラックのひとつ特徴は、国名が記されていないこと。日本の切手には必ず「日本」の文字が入る決まりになっています。でも、英國の「ペニイ・ブラック」には国名なし。これは国際郵便法ができる前だったので、特例というわけですね。
切手蒐集家のことを、「フィラテリー」 ph il at ely と言います。これはご本人もそうであった、フランスのコレクター、グレゴリー・エルバンだったという。1864年のことです。
ペニイ・ブラックの変り種に、「ブルー・モーリシャス」があります。1847年にモーリシャスだけで通用する、臨時の切手が印刷されたことがあるのです。これには二種あって、オレンジ色とブルーとの。このうちの「ブルー・モーリシャス」がより珍重される。なんでも世界に、二十六枚しか現存していないとか。
1903年のこと。この「ブルー・モーリシャス」がオークションにかけられて。予想をはるかに超えて、1450ポンドで落札。
この「事件」はたちまち話題となって。英國王室にまでも届いた。
皇太子に仕える執事が言った。
「殿下、ご存じですか。どこかの大馬鹿者が、一枚の切手に1450ポンドも払ったそうですよ。」と、皇太子はこうお答えになった。
「どこかの大馬鹿者とは私のことだよ。
後のジョージ五世もまた、熱心なフィラテリーだったわけですね。
ペニイ・ブラックが出てくるミステリに、『猟犬クラブ』があります。英国のピーター・ラヴゼイが、1996年に発表した物語。
「ペニー・ブラックを見つけたあとで、あたしたち、マイロが次にどうすべきか話しあったわね。」
これは、ミス・チルマークの科白。
また、『猟犬クラブ』には、こんな描写も。
「男がグレイの細縞の三つ揃いという姿で、警察車に向かって手をふっているところからすると、味方の確率のほうが高そうだ。」
「男」は、銀行員の、ラトリッジという設定になっています。
ここでの「細縞」は、ペンシル・ストライプかと思われるのですが。ものごとの順序からいえば、まずはじめにチョーク・ストライプがあって、その後にペンシル・ストライプが生まれたと、考えてよいでしょう。
ペンシル・ストライプのスーツを着て、切手の本を探しに行くとしましょうか。