鋼とハーフ・ライニング

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鋼は、鉄のことですよね。鋼鉄のことでもあります。
日本の鋼は、世界的にも優れているんだそうですね。これはたぶん刀の伝統と関係があるんでしょうしょう。
刀の切れ味は、高く評価されています。ただ単に、切れ味だけでなく、刀の造りからして、藝術品であります。
では、どうして刀は切れ味が最高であるのか。刀の原料となる鋼が優れているから。だからこそ、刀は細くて薄い刃物なのに、折れもせず、曲がりもせず、滑らか切れるのです。
日本では古代から鋼が造られていました。その古代の鋼造りに欠かせなかったのが、たたら。たたらは、鞴のことであります。鞴と書いて、「ふいご」と訓む。火に空気を送るための道具。この鞴によって、さらにさらに火力を高めたのです。
たたらは時に、「多々羅」の文字を宛てることもあったらしい。
たたらは今でも使われることのある言葉。
「たたらを踏む」というではありませんか。
たたら、古代の鞴は、足で踏んで、風を送った。その「足踏み」の様子から、「たたらを踏む」。
たとえば、歩こうとして、力あまって、二、三歩よろける。そんな時に、「たたらを踏む」。むかしの「たたら踏み」に似ているからです。
鋼が出てくる小説に、『青春』があります。小栗風葉が、明治三十ハ年に発表した物語。

「黑の如き濃い闇を劈いて鋼色の稲妻先に閃くと……………………。」

そういえば「鋼色」というのもありましたね。
また、『青春』には、こんな描写も出てきます。

「其の笑聲に振返つた若い紳士は、前裏仕立の脊廣を着て、細い鋼鐡縁の眼鏡を掛けたが………………………」。

「前裏仕立」とは、何でしょうか。私は勝手に、ハーフ・ライニングだと考えています。総裏に対して「半裏」。すなわち、ハーフ・ライニング。もう少し細かく申しますと、これにも種類は多いのでしょうが。
ハーフ・ライニングの服を着て。生ハムを食べに行きましょう。
生ハムを切るときの専用ナイフは、日本製の鋼に限るんだそうですね。

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