トランプとトレンチ

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トランプは、カードのことですよね。正しくは、プレイイング・カード。
tr um p と書いて、「トランプ」。「遊び札」。「手札」。「西洋かるた」」。
トランプの歴史はよく分かっていないんだそうですね。あまりにもいろんな説がありすぎて。そのなかのひとつに、「ヴェネツィア説」があります。十四世紀のヴェネツィアではじまった遊びではないか、と。ヴェネツィアのゴンドラの中で、大いに歌いながら、トランプで遊んだんだ、と。
これが後に、英國へ伝えられて、今日のトランプが完成。トランプのキングやクイーンの様子は、十六世紀、ヘンリー八世の頃のものであるらしい。
それにしてもなぜ、プレイイング・カードがトランプになったのか。明治になって、西洋人がカードを日本に持ち込んで。カード遊びの最中、盛んに「トランプ!」と叫び。それは、
「決め手!」の意味であったのですが。
この様子を眺めていた日本人がゲーム自体を「とらんぷ」だと思って、今の「トランプ」が生まれたんだそうです。
トランプが出てくる小説に、『その名にちなんで』があります。2003年に、
ジュンパ・ラヒリが発表した物語。

「いつもトランプを持ち歩いて、思い立ったときにソリテアをしたがるから、ポケットをつけるのも忘れないようにしよう。」

これは主人公のアシマ・ガングリーが故郷のお父さんに、カーディガンを編もうとしているところ。
アシマ・ガングリーはインド系の女性で、ニュウヨークに住んで、結婚しているという設定。子どもが産まれたので、インドのお父さんに見せて行こうと考えている場面なんですね。
「ソリテア」は、トランプのひとり遊びのこと。
そういえば、いつもトランプを持ち歩いていたお方に、江國 滋がいます。随筆の名人で、
手品の名人であった人物。カード・マジックの名手。そのために常にトランプを必携していたものです。
江國 滋のカード・マジックは誰もが認めるように、神業でありました。少なくとも素人離れの藝でしたね。
『その名にちなんで』の中に、こんな描写も出てきます。

「トレンチコートのポケットには本が一冊入っている。グレアム・グリーンの『喜劇役者』。」

これは主人公のお父さんのトレンチ・コート。『その名にちなんで』を読むと分かるのですが、アシマ・ガングリーもグレアム・グリーンの小説が好きで、お父さんもまたグリーンがお好きだったのでしょう。
『その名にちなんで』には、何度か「トレンチコート」が登場するのですが。
正統なトレンチ・コートの絶対条件は。まあ、これも人によっていろいろなんでしょうが。私なら、「貫通ポケット」でしょうか。トレンチ・コートは上着の上に重ねるものですから。トランプ・コートを羽織り、共ベルトを結び、下の上着から物を取り出せなくては。そのための工夫が、貫通ポケット。
どなたか本式のトレンチ・コートを仕立てて頂けませんでしょうか。

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