樽とターンバック・カフ

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樽は、木を組み合わせた容器のことですよね。英語なら、「バレル」でしょうか。油なんかでも昔は樽で取引されたのでしょう。
樽は釘一本使っていないのに、液体を入れて漏れることがありません。フランスなら、
「トノオ」t onn e a u でしょうね。ワインも樽に入れることが少なくありません。ワイン関係者は、「バリック」b arr iq u e と呼んだりするようですが。樫の大樽。ここにワインを蓄えておくと自然に木の移り香が。これを「バリック香」などと言ったりも。
樽はなにもワインに限ったことではなくて。酒もまた杉樽に入れておいたりも。

「酒は相かはらず樽酒だから、些ばかり迎るがいゝ……………………。」

文化十年に、式亭三馬が発表した『浮世風呂』の一節にも、そのように出ています。
宿酔いの男がやって来て、向酒を薦める場面なんですが。
樽が出てくる名作に、『アモンティラードの酒樽』があります。エドガー・アラン・ポオが、1846年に発表した物語。

「ところで、アランティラードと称する大樽を一本手にいれたんだが……………………。」

ここからいかにもポオらしい不思議な物語がはじまるのですが。

「私が、一番先に読んだポオの作品は、「アモンティリャアドの酒樽」であつた。」

小林秀雄は、『ポオ全集』の「解説」に、そのように書いています。
もっとも熱心に私が読んだポオは、『ボンボン』なのですが。
『ボンボン』は、1832年『サタデー・クーリア』12月1日号に発表された物語。
ピエール・ボンボンは、フランス、ルーアンの、天才料理人と設定されています。

「………もっと創意をこらしたまだら模様のジェノヴァ製ビロードの折返しが縫いつけられていた……………………。」

ここにはピエール・ボンボンの服装がこと細かく語られているのですが。
要するにピエール・ボンボンの上着には、ターンバック・カフが添えられていたという話なのです。そのターンバック・カフが共時ではなく、カット・ヴェルヴェットの生地になっていたのでしょう。
どなたかヴェルヴェットのターンバック・カフのついたグレイのスーツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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