イタリアとインマコラート

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イタリアは、長靴の国ですよね。地図を開いて眺めますと、「長靴」の形をしていますから。
十八世紀の騎士は、ほんとうに膝を越える長さのブーツを履くことがあったんだそうですね。その意味でも「長靴の国」は間違っていないのでしょう。
でも、「イタリア」なのか、「イタリー」なのか。

「………当国の人が一番多く、次いで仏蘭西英吉利独逸伊太利などで、国の総計は十七箇国です、……………………。」

明治二十二年に、幸田露伴が発表した『露団々』には、そのように出ています。
幸田露伴は、「伊太利」の傍に、「いたり」のルビを振ってあります。幸田露伴の頭のなかでは、「イタリ」だったのでしょうか。
無理矢理これを、イタリー、イタリアに区別するなら、「イタリー」なのかも知れませんが。少なくとも明治期には、「イタリー」の表記が少なくなかったと、思われるのですが。

「アイリーンのハンガリア料理、ハムブルグのドイツ料理、麻布には、イタリー料理の店も出来た。」

昭和三十年に古川ロッパが書いた『ロッパ食談』には、そのように出ています。
古川ロッパは、「イタリー」と書いているのですが。
「麻布には、イタリー料理の店も」。もしかすれば「ニコラス」を指しているのでしょうか。「ニコラス」は日本ではじめてピザを広めた店だと考えられています。

「………終って一人ニューグランドへ。ポタージュはオニオングラタン。イタリ料理ラヴィオリ・ニュアスとてもよろし。」

古川ロッパ著『昭和日記』に、そのように書いています。昭和十一年九月二十八日、月曜日のところに。
ここでは、「イタリ料理」と表記しているのですが。

イタリアが舞台となる小説に、『アルトゥーロの島』があります。エルサ・モランテが、
1957年に発表した物語。
著者の、エルサ・モランテは、イタリアの作家、アルベルト・モラヴィアの妻。
エルサ・モランテは、1912年8月18日、ロオマに生まれています。
小説『アルトゥーロの島』は、ナポリ湾に浮かぶある島に住む少年の物語。

「それが雌で、月のように真っ白だったのでインマコラッテと名づけた。」

これは少年がお父さんに仔犬を買ってもらう場面。
「インマコラッテ」。これは「インマコラート」 imm ac ol at o と関係ある言葉なのでしょう。
イタリア語の「インマコラート」には「白」の意味もあり、「純粋」の意味もあるようです。
白い服を着ることもあるでしょう。白は単に色であると同時に、「純粋」の象徴でもあります。理屈を並べますと、人は純粋に近づこうとして白を着るのかも知れません。
そのことを考える上で、「インマコラート」は貴重であるのではないでしょうか。
どなたかインマコラートのスーツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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