花模様とハンカチーフ

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花模様は、花柄のことですよね。英語ですと、「フローラル・パターン」でしょうか。
花柄の壁紙なんかもあります。花柄の内装などもあります。
その昔、イヴ・サンローランは、シトロエン2CVの内装を花柄にして、愛車にしたことがあるんだそうですね。
ところで、「花柄」なのか、「花模様」なのか。
むかしは、「花模様」。今では「花柄」が少なくありません。明治期の小説などを読んでいても、「花柄」には出会わないのです。が、「花模様」なら。

「此の家の家内お春は束髪にして、花模様のある「ラセン」を懸けたる「ターフル」に倚り……………。」

明治二十一年に、末広鉄腸が発表した『花間鶯』に、そのように出ています。
ここでの「ラセン」は、「羅氈」のこと。つまりウール地の敷物です。
同じように「ターフル」は、今日のテーブル。要するにテーブルの上に、ウールの敷物が掛けてある。それが「花模様」になっていると、説明しているわけですね。
一方の「花柄」は、昭和になってから多く用いられるようになったものでしょう。
花柄は女性専用という印象もあるようですが。必ずしもそうではありません。
1960年代のロンドンで、「グラニー・プリント」のシャツが流行ったものです。
「グラニー」gr anny は、もともと幼児語で「おばあちゃん」のこと。小花模様は、郷愁の柄という意味だったようです。
同じように「グラニー・グラス」もありました。「おばあちゃん眼鏡」。ごく小型の眼鏡。
もともとは老眼鏡なんですが、あえてそこに素通しのレンズを嵌めるの粋とされたわけです。ジョン・レノンなども1960年代には、グラニー・グラスに、グラニー・プリントのシャツを着たりしたものであります。
もちろん、「モッズ・ルック」の一環として。
本来の「モッズ」M ods は、「モデレイション」M od er at i on の略。これは1858年頃から使われているらしい。
「モデレイション」は、オックスフォード大学の学位試験のこと。それを学生たちが、「モッズ」と省略して呼んだものです。
もうひとつの「モッズ」は、「モダンーンズ」m od erns を短くしたスラングだったのでしょう。
それはともかく、今からざっと六十年前に、「モッズ・ルック」が流行ったのは、事実であります。
花模様が出てくるミステリに、『死の接吻』があります。1953年に、アイラ・レヴィンが発表した物語。

「テーブルには一ドル紙幣がおいてあり、そのそばに紙ナプキンが花模様のレースのように精緻なかたちに……………………。」

中田耕治の訳ですが。「花模様」となっています。ちょっとクラッシックかも。
また、『死の接吻』には、こんな描写も出てきます。

「私室には、少なくとも一ダースのハンカチーフがしまってけれど、それは自分の服にあわせたものでした。」

「一ダース」。たぶん1950年代くらいまでは、ハンカチーフの最低単位は、一ダースだったようですね。
女性のハンカチーフの流行期は、フランスのルイ十六世の時代。およそ考えられる限りの絢爛豪華なハンカチーフに人気が集まったという。
この時代、マリイ・アントワーネットは、王様に言った。「ハンカチーフは四角に決めてちょうだい。」で、ルイ十六世は高らかに宣言。
「朕が国家を通じてハンカチーフの長さは幅と同じにすべし」
これで四角いハンカチーフとなったのであります。そしてマリイ・アントワーネットは悠々と貝殻の形などのハンカチーフを愛用したのです。
どなたか一ダースで買いたくなるような白麻のハンカチーフを作って頂けませんでしょうか。

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