ポルトガルはヨオロッパの国の名前ですよね。
ポルトガルからカステラを想う人もいるのではないでしょうか。ポルトガルには昔、
カスティリャという場所があって。ここから流転に流転を重ねてカステラが生まれた。そんな説もあるらしい。
カステラは和菓子なのか、洋菓子なのか。どっちでもいいようなものではありますが。頭のカタイ私としては、和菓子なのか洋菓子なのかで、お供の茶が違ってきますので。
もしカステラが和菓子なら、当然、煎茶を添えたものであります。でも、カステラが洋菓子というのなら、紅茶で頂きたいものです。カステラに珈琲はちょっと違うのではないか、というのが私の偏見なのですが。
どうしてカステラには紅茶なのか。紅茶はどうしてもウイスキイを想わせるところがあります。そのウイスキイをば、カステラに染み込ませますと、まこと美味だからであります。
その昔、ポルトガルに旅したお方に、アンデルセンがいます。
1866年のことです。アンデルセンは1866年の1月31日にコペンハーゲンを発って。ボルドオ、マドリッドを経て、5月6日に、リスボンに入っています。
「スペインからポルトガルに入ると、これはなんと大きな変化だろう。まるで中世から一足とびに現代に入ってきたようである。」
アンデルセン著『ポルトガル紀行』には、そのように書いています。
アンデルセンの時代、スペインからポルトガルに入るのには、簡単で、名前を聞かれただけ。ただし、デンマークの名前「アンデルセン」は理解が難しく、税関員はひどく間違えて覚えて、さらにもっと間違えた綴りで、手帳に書きつけた。そんなふうにも書いています。
「この町の金細工師がみんな集まって住んでいる通りである。金のネックレスとか金メダルとか、この種のものをきらびやかに飾った店がずらっと軒を連ねている。」
アンデルセンは、ポルトガルの「ルア・ド・オウロ」の様子を、そのように伝えています。
ポルトガルが出てくる小説に、『幽霊船』があります。1855年に、ハーマン・メルヴィルが発表した物語。
「………しわがれた声で訳の分らぬ言葉を喚いていた。これが分るのは例のポルトガル水夫だけだ。」
また、『幽霊船』には、こんな描写も出てきます。
「………黒染めのビロードを材料に、チリ風に仕立てたゆるい上衣に、下には小さい、白い胴着。靴下も純白、膝と甲には銀の尾錠。頭には、山高のソンブレロ、優美な草で編んである。」
「………ゆるい上衣に」。私は勝手にボレロ風衣裳を想ったのですが。スペインの闘牛士の衣裳は基本的にボレロですから、女専用と決めつけることもないでしょう。
「チェック縞のボレロの間から夥しいレエスが溢れて風にそよいでゐた。」
昭和二十四年に、三島由紀夫が発表した『仮面の告白』にも、ボレロが出てきます。
どなたか紳士にふさわしいボレロを仕立てて頂けませんでしょうか。