シャンデリアとジーンズ

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シャンデリアは豪華な照明のことですよね。
「シャンデリア」 ch and el i er は、フランス語の「シャンデル」と関係があるんですってね。「ろうそく」の意味。今は主に電球ですが、古い時代には、ろうそくだったのでしょう。
でも、シャンデリアは少なくとも、古代ロオマの頃からあったという。ただし古代ロオマの時代には、オイル・ラムプ。なんらかの油に火を灯して、照明としたのです。
ただ、オイル・ラムプだけでは仄暗いので、ガラスに反射させることを思いついて。そのためのガラスに珍重されたのが、ヴェネツィア・グラス。透明度が高かったからでしょう。
たしかにシャンデリアはそれ自体が絢爛なのですが。もともとは少なく光をいかに大きな光に変えるかの、工夫からはじまっているのかも知れません。
シャンデリアが出てくる小説に、『夜会服』があります。三島由紀夫が、1966年から1967にかけて、『マドモアゼル』に連載した物語。

「午後六時半、早春の寒い日暮に客が集まり、きらびやかなシャンデリアの下で、すっかりその戸外の寒さから遠のいて……………………。」

これは、結婚式の、披露宴会場の描写として。文中に。

「旧財閥のクラブを借り切ることができ………………………」。

と、説明されていますから、あるいは「三井倶楽部」ではないかとも想像できるのですが。
シャンデリアは絢爛であるに越したことはありません。でも、一般の家庭には、絢爛たるシャンデリアは難しい。天井までの高さの問題があるので。部屋を明るくするつもりが、絨毯を明るく照らしても、意味がないので。
それはちょうど、三島由紀夫の小説に「シャンデリア」が似合うのに似ているのかも知れませんが。
などと言ったすぐ後なのですが。短篇の『納屋は燃える』にも、シャンデリアが。『納屋は燃える』は、ウイリアム・フォークナーが、1950年に発表した物語。

「天井からつるされてピカピカ輝いているシャンデリアや………………」。

また、『納屋は燃える』には、こんな描写も出てきます。

「そのからだにさえ小さすぎるブルー・ジーンをはいた少年は………………」。

龍口直太郎の訳文には、「ブルー・ジーン」となっています。原文では、 b l u e je ans なのでしょう。フォークナーはここで慎重に言葉を選んだのではないか。
フォークナーは、1897年9月25日。ミシシッピー州に生まれています。フォークナーは幼い頃から「リーヴァイズ」に親しんでいたはずです。
1950年発表の『納屋は燃える』にも、「リーヴァイズ」と書いたかも知れないのです。が、あえて「ブルー・ジーンズ」と。
それは、より多くの読者のための、一般性の高い言葉を選んだ結果だと、私は勝手に想像しているのですが。
明るいシャンデリアの下で。フォークナーを読む日は、はたして来るのでしょうか。

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