カフェとカンカン帽

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カフェは、珈琲のことですよね。c off e e と書いて、「コーヒー」とも。
あるいはまた、「カフェ・オ・レ」だとか。朝、ベッドで飲むカフェ・オ・レが人生最高の幸せなんて、おっしゃるお方もいらっしゃるようですが。
そしてまた、カフェは珈琲を飲む場所でもあります。明治の頃の「カフェ・プランタン」は、今でいう喫茶店に近いものであったらしい。
「カフェ・テラス」だとか、「カフェテリア」なんて言い方もあるようです。

「珈琲を啜る時、富子は今度は愛嬌よく優しい声になつて……………。」

永井荷風が、明治三十五年に発表した『地獄の花』に、そんな一節が出てきます。永井荷風は「珈琲」と書いて、「カフエー」のルビを添えているのですが。
これは「黒淵家」の食卓でのこと。今、夕食が終ったばかり。ここでの「カフエー」が珈琲であるのは間違いないでしょう。
では、「富子」は何を着ているのか。

「………薄色の絹セルの単衣の上に献上博多の丸帯を締め、糸織の羽織を肩の先に引掛けた様子は……………。」

セルはふつうウール地。でも、「絹セル」もあったことが、荷風の描写によっても窺えるでしょう。

シラー町の突き当たりの角はおおきな当世ふうのカッフェーで、ガラス窓の中から二十世紀の男女が、通りかかった毛色の変わった私を珍しそうに見物していました。」

明治四十三年に、寺田寅彦が書いた『先生への通信』に、そのように出ています。場所は、ベルリン。ここでの「先生」が、夏目漱石を指しているのは申すまでもありません。そもそもは、寺田寅彦の、夏目漱石宛の手紙だったのですから。
この日、寺田寅彦はベルリンで、シラーの旧居などを見学。その時の様子を、漱石に書き送った内容なのです。
寺田寅彦は、「カッフェー」と書いていますが、もちろん今日のカフェのことでしょう。

カフェが出てくる小説に『フランス紀行』があります。2001年に、フランスの作家、
アノワ・デュトルトルが発表した物語。

「その十五分後、ふたりは博物館のカフェテリアで一杯飲んだ。」

博物館で偶然出会った男女がカフェに行く場面として。男は、「デイヴィッド」。女は、
「ローズマリー」という設定になっています。
また、『フランス紀行』には、こんな描写も出てくるのです。

「駅前でお待ちします。ぼくは白いコスチュームを着て、カンカン帽をかぶって、スーツケースをもっていますから」

これもまた、「デイヴィッド」の科白として。フランス語なら「カノティエ 」でしょうか。
日本での大正期には、多く「カンカン帽」と呼ばれたものです。一説に、指で帽子を叩くと、カンカンと音がするので、「カンカン帽」となったとも。
英語では、「ボーター」 b o at er 。昔、ボート競技のための帽子だったので。フランスのカノティエ も、イギリスのボーターの影響から流行になったものです。
どなたかカンカン帽が似合いそうな白麻スーツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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