ガス燈とカフ・リンクス

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ガス燈は、昔の灯りのことですよね。今は多く電気の灯りですが、それより前の時代には、ガスの炎で灯り代りとしたのでしょう。
ガス燈には古典的な輝きがあります。第一、シャーロク・ホームズが蛍光灯の下で虫眼鏡を拡げていても様になりませんから。やはりシャーロク・ホームズには、ガス燈がふさわしいものです。
1944年のアメリカ映画に、『ガス燈』があるのは、ご存じでしょう。イングリッド・バーグマン主演。原題もまた『ガスライト』。
イングリッド・バーグマンはこの『ガス燈』で、「アカデミー主演女優賞」を得ています。映画『ガス燈』はちょっとミステリ風味でもありまして。後になって、「ガスライティング」は、心理学用語にもなったほどです。映画の影響力は大きいですね。

「千七百九十八年英國に於いて初めて瓦斯燈を用ゆることを工夫し……………。」

福澤諭吉が、慶應元年に書いた『西洋事情』には、そのように出ています。この福澤諭吉説に従いますと、やはりガス燈はイギリスにはじまっているんですね。シャーロク・ホームズに似合うはずです。

「四五軒先の瓦斯燈の下を大黑傘肩じして少しうつむいて居るらしく……………。」

樋口一葉が、明治二十九年に発表した『たけくらべ』の一節にも、そのように出てきます。明治二十年代の東京に、「瓦斯燈」があったのは間違いないでしょう。

ガス燈が出てくる小説に、『時間割』があります。フランスの作家、ミッシェル・ビュトールが、1956年に発表した物語。

「………ガス燈のまわりの、群れをなして飛ぶ白い蠅を思わせるにじんだ暈の下で、薬局をさがして鎮静剤を買おうとしていたが……………。」

これは実際にはイギリスのマンチェスターが舞台になっています。なぜ、フランス人のミッシェル・ビュトールが、英国のマンチェスターを選んだのか。
ミッシェル・ビュトールは、1951年から1953年まで、マンチェスターに住んでいたので。マンチェスターでのフランス語教師として。そこでの体験から生まれたのが、『時間割』なのです。『時間割』はちょっと不思議な小説でもあります。この中に。

「彼は指をつき出して(真珠母のカフスボタンのついたカフスの白い線、聖職者服の上衣の黒い線、祭服をふちどるレース)……………。」

そんな描写が出てきます。司祭ですから当然の服装なのですが。

昔、大宅壮一という評論家がいらして。このお方のカフ・リンクスは着る前に、先に袖口に留めておいたらしい。手間を省くために。
では、どうしてチェーン式のカフ・リンクスは面倒なのか。十九世紀の紳士はたいてい執事に留めてもらったから。
どなたかチェーン式でなおかつ留めやすいカフ・リンクスを作って頂けませんでしょうか。

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