菓子と頭文字

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菓子は、甘味のことですよね。今ふうに申しますと、「スイーツ」でしょうか。
イタリア人のいうところの「ドルチェ」にも近いのでしょう。「ドルチェ・ヴィータ」とよく言うではありませんか。
食事の後、ちょっと甘いものが欲しくなる。これも自然の欲求なのでしょうか。
そうかと思えば、三時頃に、珈琲を飲む。そんな時にも、甘味を添えたくなってしまいます。
ひと時代前の日本人は、どんなおやつを食べていたのか。

「………最中や、オコシや、カリントウや、栗マンヂュウや、ヨーカン………」

丸谷才一著『男のポケット』にそのように出ています。
でも、丸谷才一は、むしろビスケットやチョコレートなどに惹かれた。そうも書いています。子供の頃から、ハイカラだったのでしょう。
私は今でも、最中やかりんとう、栗饅頭などはよく食べます。が、「オコシ」は、昔の記憶にあるだけです。
おこし。古くは「おこし米」と言ったらしい。穀類を固く押しかためた菓子。
ことに固いものを「岩おこし」よ呼んだそうです。
岩おこしは、元禄のはじめ、大坂の道頓堀で売られていたという。

「………煎餅やおこしのたらしも利かで、皆々手を引いて………」

樋口一葉が、1895年に発表した『十三夜』に、そんな一節が出てきます。
明治の頃には、煎餅と並ぶ菓子のひとつだったのでしょう。おこしは。

丸谷才一の名作『男のポケット』を読んでおりますと、こんな話も出てきます。

「自分の店の頭文字を図案にして品物につける傾向である。」

頭文字。図案。今でもよくありますよね。丸谷才一は、この商品につけられた頭文字が気になって仕方がなかった。なぜなら自分の頭文字ではなかったから。

頭文字。イニシャル。時にシャツの胸に頭文字を入れることがあります。
十九世紀の上流階級では、洗濯係を雇っていた。シャツを洗って、アイロンをかける。そしてシャツを畳んだ時、誰のシャツであるかが分からないと、困る。それですぐ見える場所に頭文字を入れておいたんだそうですね。
どなたか頭文字の似合うシャツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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