ダルジェルと第一ボタン

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ダルジェルは、英国の印刷会社の名前ですよね。十九世紀、ヴィクトリア時代には、進歩的な木版印刷の会社でありました。
ジョージ・ダルジェル。エドワード・ダルジェル。ジョン・ダルジェル。トオマス・ダルジェル。この四人の兄弟によって運営されていたので、「ダルジェルズ」と称されたわけです。
あまりにも有名な『不思議の国のアリス』は、1865年に出版されています。これを印刷したのも、「ダルジェルズ」でありました。
『不思議の国のアリス』が、ルイス・キャロルの作、ジョン・テニエルの挿絵であることは、いうまでもないでしょう。
ジョン・テニエルとルイス・キャロルは、凝りに凝って。一度、木版に仕上げ、その一部を切り抜き、ツゲの木片を入れ込んで、さらに彫る。そんなこともやっているんだそうですね。

ルイス・キャロルが、オックスフォード大学の数学教授、チャールズ・ラトウィッジ・ドッドソンの筆名だったのは、よく知られている通り。
チャールズ・ドッドソンは多趣味でもありまして、その一つが、写真。
1856年3月18日に、写真機材一式を購入しています。学校近くの「オッドウエル」という店で。そこでは、15ポンドを支払っています。
この時ドッドソン、二十三歳。それからというもの、主に「少女」を被写体に数多くの写真を写しています。その頃のドッドソンに「少女趣味」があったのは、間違いないでしょう。

『不思議の国のアリス』は最初、ルイス・キャロル自身の挿絵を使うつもりになっていたようです。事実、多くの絵をキャロルは描いてもいます。
ところが、本格的出版になって。キャロルは、ジョン・テニエルに絵をお願いしています。
1860年代のジョン・テニエルは売れっ子絵師で、すでに大家でもありました。結局、ジョン・テニエルは『不思議の国のアリス』の挿絵を引き受けてくれたのです。

1860年頃。写真館「ジョン&チャールズ・ワトキンズ」で写されたジョン・テニエルは、モーニング・コート姿になっています。
そして高い位置の、第一ボタンのみ留めた着こなし。十九世紀にあっては、第一ボタンだけ留めておくのは、よくある着こなしだったのです。
どなたか第一ボタンだけを留めて様になるスーツを仕立てて頂けませんでしょうか。

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