ビロードとピンク

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ビロードは、ヴェルヴェットのことですよね。昔は、「天鵞絨」の宛字を使ったんだそうですが。
ビロードは宝石とも関係があります。たとえばダイヤモンドの指環なども、多くビロードを張った小箱に容れられたりするものです。やはり宝石が映える生地だからでしょう。
ビロードは神秘的な印象もあります。ひとつの例ではありますが、奇術。奇術の背景などにも黒のビロードが用いられたりするものです。
神秘的といえば。大正六年に、谷崎潤一郎は、『天鵞絨の夢』と題する幻想小説を書いております。

「………両脚長くして極めて優雅なる総身を純白の絹天鵞絨の服もて包みたるが故に………」

これは当時の中国の十六歳の少年の様子について。

🎶 上海帰りの リル リル………

昭和二十六年に大流行した歌に、『上海帰りのリル』があります。
歌手は、津村 謙。当時、18万枚を売上たという。そして津村 謙の形容が、「ビロードの唄声だったのです。
昭和二十六年は、まだ戦後の混乱期で、「尋ね人」の告知が出された時代。
戦争が終わってもまだ帰って来ない肉親を探すための時間だったのです。
作詞家の東絛寿三郎は、この「尋ね人」に想を得て『上海帰りのリル』を書いたんだそうですね。

ビロードが出てくるミステリに、『法と淑女』があります。1875年に、ウィルキー・コリンズが発表した物語。

「内側には青いビロードが張ってありましたが、一つの隅に青いシルクの切れ端が出ているのを見つけました。」

これは箱が二重になった秘密の容器になっていたわけです。

コリンズの『法と淑女』を読んでおりますと、描写も出てきます。

「案の定、ピンクのディナー・ジャケットを着たミゼリマス・デクスターが………」

もちろん、室内での、ミゼリマス・デクスターの着こなし。
どなたかピンクのビロードで、ディナー・ジャケットを仕立てて頂けませんでしょうか。

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